ADFミラノサローネデザインアワード2020 優秀賞

ADF Milano Salone Design Award 2020の優秀賞を受賞されたDaan Snippe氏の「UNDER PRODUCTION」とToshiki Yabushita氏の「ルイス ~ゆりかごからロッキングチェアまで 」の2つのプロダクトデザインを紹介します。

Daan Snippe氏「UNDER PRODUCTION - 小規模生産者が小規模生産で大量の利益を産む方法」

デザインコンセプト

多くのデザイナーや小規模生産者は、その技術だけで生計を立てる難しさに直面しています。私は、デザインをすると同時に金銭的にも利益のでる生産方法を考えました。それを「小規模大量生産」と呼びます。

インターンシップをしている際、私は小規模な生産方法で運営されている会社にいました。自営業のデザイナーの挑戦は、新しいデザインを思い付くだけでなく、利益を産むデザインを考える必要があることに気付きました。この問題により、「新しい何かを作成するために、大規模生産の効率的な方法を小規模生産にも活用することはできないか」という疑問がわいてきました。そこで、大企業の生産方法(大量生産)を調査し、新しいより経済的な生産方法を設計するために、良い方法がないかを調べました。

IKEAの知名度と独自の生産方法に焦点を当て、私が採用できる生産方法には2つの側面があることを発見しました。ひとつ目は、販売価格が材料価格を下回るケースが多い、イケアの低価格製品を材料として調達することで、低価格の材料購入が可能だということ。 ふたつ目は、できるだけ少ない材料を使い、簡単に組み立てができるということです。

私の作品はIKEA(Koopjeshoek)から材料を調達しました。私は、生産コストを削減し、ユニークで美的、高品質かつ個性的な生産方法を考えました。 すべての製品は、IKEAのBACKABYソファと、常に販売されている木材から作られています。木の色と仕上げのバリエーションにより、無限の可能性が生まれます。 すべての家具のコレクションは、1時間以内に組み立てることができます。より多く生産することで、ひとつのアイテムはより速く生産することができます。

この作品は、機能的な手作りのデザインを作成するための実行可能な生産方法としてだけでなく、多くの仲間のデザイナーが採用できる考え方であるともいえます。もともとの家具に、より新しい価値を与えることができる家具なのです。

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これはGIJSBRANDチェアで、すべての測定値(43cm)を標準化し、簡単な組み立て方法で2時間で制作することができます。この椅子の材料費は25ユーロです。椅子は2個セットで購入でき、販売価格は499ユーロです。

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これはEWOUDコーヒーテーブルです。 GIJSBRANDチェアと同じ製造方法、材料、組み立て方法を使用して、1時間半で作ることができ、材料費のコストはわずか15ユーロです。

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これはAERTの本棚で、GIJSBRANDチェアとEWOUDコーヒーテーブルと同じ生産方法で作成されています。材料費は35ユーロです。

Daan Snippe氏の受賞コメント

このたび、私の作品が評価され、優秀賞をいただけたこと、大変光栄に思っております。

この作品が、人々がより広い視野でデザインにアプローチし、新たな創作性に挑戦するきっかけになれば幸いです。この賞をいただくことで、より多くのオーディエンスと私のアイデアを共有することができ、とてもうれしく思っております。

Daan Snippe

Toshiki Yabushita氏「ゆりかごからロッキングチェアまで - 変形する家具 ルイス」

デザインコンセプト

人間の成長は時にとても速く、世の中にある多くの赤ちゃん用家具たちは、ほんの短い期間しか利用されない。そんな中、人と共に成長し、人生を通して利用できる家具があっても良いのではないだろうか? 赤ちゃん、子供、大人の日常生活における共通の「揺れる動き」に着目し、ベルトの位置を座面、背もたれに合わせ変更することで、 ゆりかご・木馬・ロッキングチェアへと姿を変える家具、ルイス。

これだけモノが溢れている世の中で、一つのモノと寄り添って生きていく事はなかなか困難なことです。 愛着のあった玩具、洋服、それらと共に人生を歩む事は難しいですが、家具であれば、長い視点での新たなモノとの関係性を提案できると思い、このプロダクトに着手しました。そしてこの作品は、そんな想いを自分の子供に伝えるため、彼のために制作したプロダクトです。

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座面と背もたれの素材に、ベルトシステムを利用することで、ゆりかご・木馬・ロッキングチェアへとその用途を容易に変更することができる。

Toshiki Yabushita氏の受賞コメント

自分の子供への想いをカタチにしたプロダクトで、光栄ある賞を頂き深く感謝致します。 現在ドイツでデザイナーとして活動していますが、これからも日本・ドイツに関わらず、デザインを通し、新たな可能性を世の中に発信できればと思っています。

Toshiki Yabushita

略歴

青山学院大学理工学部卒業後、東京にてマーケティング、グラフィックデザインに従事。2007年、渡独。2013年、Burg Giebichenstein Kunsthochschule Halleにて、プロダクトデザイン学士課程を卒業。2014年、同大学院を首席にて修了在学中に竹工芸作家、八木澤正氏のもと竹工芸技術の基礎を学ぶ。2016年、竹を利用した現代の生活に合わせたプロダクトを提案し、その独自のビジネスモデルにて、起業家支援プログラム „BRUT“(ブレーメン・ドイツ)を修了。平行して、ドイツの以下デザイン事務所にて、様々なプロジェクトに携わる。また、ドイツ美術大学にて、非常勤講師として活動する。

  • Ole Grönwoldt Spatial Design
  • Saroshi - design of japan
  • Christian Werner - Industrial Design
  • henkels: gestaltet
  • Simoleit Design

主な受賞・展示履歴

  • 2019 - 12th SHACHIHATA New Product Design Competition 特別審査員賞受賞
  • 2019 - International bamboo design masters exhibition in Yibin 中国より招待展示
  • 2018 - Plastic Design & Story Award 2018 入選
  • 2018 - BIOTOPIA-FEST „STOFF DER ZUKUNFT“ Museum Mensch und Natur より招待展示
  • 2018 - Asian Bamboo Life Art Exhibition Crafts Museum, China Academy of Art より招待展示
  • 2017 - Craftstil. Der Manufaktur Markt im stilwerk Hamburg 出展
  • 2015 - IDEENLOTSEN BREMEN - BUSINESS AS UNUSUAL 2015 受
  • 2014 - Dutch Design Week 2014 出展
  • 2014 - GiebichenStein Designpreis 2014 ノミネート
  • 2013 - eco japan cup 2012 準グランプリ受賞
  • 2011 - 第51回 日本クラフト展 入選
  • 2011 - TOKYO DESIGNERS WEEK 2011 出展
  • 2011 - 日独友好賞(日独交流150周年 )受賞
  • 2011 - universal design award 2011 受賞
  • 2010 - designpreis halle 2010 ノミネート
  • 2009 - 京都ものづくりルネッサンスコンペティション ノミネート
  • 2006 - FIFA WM 2006-Mein erstes Mal in NRW 入選

2021年以降もADFミラノサローネデザインアワード開催を予定しておりますので、皆様のご応募をお持ちしております。「ADFミラノサローネデザインアワード2021」への応募受付は2020年10月から12月を予定しております。