近代建築の五原則は1926年 (昭和元年にル・コルビュジエによって提唱された。これはバウハウスデッサウ校舎が竣工した年である。翌年、彼はそれを用いてヴァイセンホーフ・ジードルンク住宅展 (1927) にてモダニズム実験住宅を設計した。当時の住宅はまだ、合理性よりも伝統性や慣習が重視されていた。産業革命がもたらした自動車などの生産と同様に、新材料・工業生産・量産化の可能性から、コルビュジエは「住むための機械」という表現を用い、旧態依然の住宅のあり方を捉え直そうとしていた。今回はその近代建築の五原則に基づいた、近代建築の傑作とされるサヴォア邸(1931)を紹介する。

ル・コルビュジエLe Corbusier1887-1965

スイスで生まれ、主にフランスで活躍した建築家。近代建築の四大巨匠の一人。1926年に鉄筋コンクリートを用いた近代建築の五原則「ピロティ」、「自由な平面」、「自由な立面」、「水平連続窓」、「屋上庭園」を提唱した。ヨーロッパ、日本、インド、南北アメリカで建築を設計し、フランスを中心とする7か国に残る建築群が世界遺産となり、初の大陸を跨ぐ登録となった。

サヴォア邸 (Villa Savoye) 1931

ポワシーというパリから電車で30分ほどの都市に建つ、サヴォア家の週末別荘。ル・コルビュジエとピエール・ジャンヌレによって設計され、明るい時間と名付けられた。鉄筋コンクリートのラーメン構造で、コルビュジエの近代建築の五原則が高い完成度で実現された傑作とされる。

戦時下ではドイツ軍・連合軍に占領され、多大な損害を受けた。1958年にポワシー市がこの土地を買い取ったが、1962年に国に売却された。取り壊しを逃れた邸宅は建築物としての重要性が認識され、1963年から1997年まで修復が行われた。 コルビュジェの存命中に歴史的建造物に認定されている。

近代建築の五原則「ピロティ」、「自由な平面」、「自由な立面」、「水平連続窓」、「屋上庭園」に応じてサヴォア邸の建築を紹介していく。

「ピロティ」建築を地面から解放し、人や車や植物のために北側外観

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ピロティ

ピロティによって持ち上げられた2階部分と、彫刻的な3階のサンルームが印象的である。1階部分の外壁は緑色に塗られ、周囲の森林と調和するとともに2階部分の影に隠れ、地面から切り離された建物を際立たせている。

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玄関ホール

北側に面しており、均一な採光がガラス面から建物内に入り、光にあふれた空間となっている。中に入ると左に彫刻的ならせん階段と、中央になだらかに続くスロープが目を引く。

「自由な平面」部屋の形を構造壁から解放し、自由な形の空間に

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らせん階段

地下室から3階のサンルームまで続く彫刻的な階段。階段と丸柱とガラス面の曲面がゆったりとした空間をつくっている。

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スロープ

玄関ホールの中央に位置するスロープは、なだらかに2階、3階へと導いている。階段を上るのとはまた違う連続性・視覚効果をもたらしている。

「自由な平面」、「自由な立面」構造壁から解放された立面は大窓を可能に

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廊下

スロープをあがると、西側のテラスに面した大窓からの採光が廊下とらせん階段を明るく照らす。

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リビング

南側は大窓が屋上テラスに面し、視界が開け放たれている。天井のニッケルメッキされたスチール製の長いペンダントライトによって照らされる。

「水平連続窓」建物内部を一様に明るくする

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キッチン

廊下に面して豊富な収納棚と料理を出し入れする窓口が備えられ、壁が収納と配膳カウンターとして機能している。

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ゲストルーム

すべての部屋において、窓の下のコンクリート製の棚とアルミニウム製の引き戸が置かれている。間仕切り棚の裏にはゲスト専用の洗面・トイレが配置されている。

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息子たちの寝室

勉強スペースと休息スペースが多機能なクローゼットによって区切られている。奥の浴室との壁は曲面になっており、パステルカラーに塗装された空間が特徴的である。

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夫人の居間

夫妻の寝室と屋上テラスの間に位置する部屋。窓の下にはカウンターで、外の景色を眺めながら読書や書き物ができる。

「自由な平面」

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夫妻の寝室

クローゼットとカーテンで寝室と浴室が区切られている。スロープのある踊り場と、夫人の居間からテラスへもアクセスできる回遊性のあるプランとなっている。

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浴室

寝室と浴室の間のタイル張りの浴槽と長椅子は、邸宅のシンボルの一つとなっている。上部には天窓からの自然光が白タイルの空間を明るく照らす。

「屋上庭園」斜めの屋根を平らにし、屋上と空を解放する

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屋上テラス

サヴォア家の生活空間は2階部分にあり、屋上テラスを中心にして配置されている。外壁に面した開口部は水平に連続した窓に呼応し、景色を切るフレームになっている。

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サンルーム

最上階に曲面でデザインされた風除けの壁は当初部屋として設計されていたが、減額のためサンルームとなった。セーヌ川を眺めるようにデザインされている。

「ピロティ」

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ピロティ

車の使用を前提とされた邸宅は、柱を壁から間隔を広くとったピロティが車寄せとして機能するとともに、空間に浮かぶ建築を実現している。

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ガレージ

1階の空間に一体化され、3台の車が駐車できる。パネルがカーブに沿ってスライドして開く。

「ピロティ」、「水平連続窓」、「自由な立面」により4つの立面は造形的に統一されている

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南側外観

ピロティと水平連続窓が立面を特徴づけている。一階部分はランドリールームと使用人の部屋となっている。

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管理人兼庭師の家

敷地入り口にはサヴォア邸に似たデザインの管理人用の建築が建っており、メゾン・ミニマム・ユニファミリアルと呼ばれる、最小限住宅の建築モデルによって建設された唯一の例である。サヴォア邸と共に世界遺産となっている。

サヴォア邸は2016年7月にユネスコ世界遺産に「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」として登録されており、一般でも外観から内部まで見学することができる。

このように傑作とされるモダニズム住宅と現代の住宅のデザインは、100年ほど前からそう大きく変わっていないことに驚かされる。以前紹介したような、ヴァイセンホーフ・ジードルンクの住宅群バウハウス建築シュレーダー邸など、同時期の建築や歴史背景を踏まえながら、色や形や素材の共通点や違いを観察すると、建築をより楽しむことができるだろう。