そごう広島本館2階特設会場にて「ヒロシマ」を考える現代アート展

Souya Handa Projectsとタメンタイは、そごう広島本館にてシクステ・カキンダ、伊東慧、山本れいら、半田颯哉の4人の現代アーティストによるグループ展「Take it Home, for (__) Shall Not Repeat the Error.」を第47回G7広島サミットの開催期間を含む2023年5月16日から5月22日まで開催する。本展を主催するのは、広島出身のアーティスト・インディペンデントキュレーターである半田颯哉が主宰するSouya Handa Projectsと、広島を拠点にアートマネジメント事業を展開するタメンタイ。本展はG7広島サミットを応援する取組となる。adf-web-magazine-take-it-home-for-shall-not-repeat-the-error-1

G7広島サミットの開催に合わせて企画された本展は、「なぜ世界中から広島に人が訪れるのか」ということに焦点を当て、広島で起きた過去のことを現代を生きる人々はなぜ学びに行くのかを考える本展のキュレーター、半田颯哉はその問いに対し、「広島で見て、聞いて、知ったことをそれぞれが持ち帰り、そしてそれを活かして平和な未来を一緒に作っていくため」という答えを提示する。そして、「ヒロシマ」の前と後——広島に投下された原爆に使用されたウランの採掘されたコンゴと、第二次大戦後のアメリカの核兵器実験による被爆被害を繋げ、歴史上の特異点としての「ヒロシマ」ではなく、「ヒロシマ」に / から繋がる連続した歴史を紡いでいく。また、展覧会のタイトル「Take it home, for (__) Shall Not Repeat the Error.」は、広島の原爆死没者慰霊碑の碑文「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」を英語訳したものに由来している。

シクステ・カキンダ

アフリカ人アーティストとして初めて東京藝術大学で修士号、博士号を取得したコンゴ民主共和国出身のアーティスト。本展ではカキンダの故郷であるコンゴと広島の関係に焦点を当てた作品を展示。コンゴにはシンコロブエ鉱山と呼ばれるウラン鉱山があり、広島に投下された原爆は当時のベルギー領コンゴから産出されたものが使用されていた。カキンダはこのプロジェクトによって、コンゴと広島の見えない繋がりを示し、そして断絶されていた2つの土地の歴史をアーティストの身体によって橋渡しする。

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シクステ・カキンダ《Intimate Moments / Monologue》(2019)より

半田颯哉

18歳まで広島で育ち、現在は東京を拠点とするアーティスト。多くの広島出身者と同様に、「ヒロシマ」の歴史を次世代に継承していくことを重要なことだと考えている半田は、広島に原爆が投下されてから今までに経過した時間と、広島を訪れることの意義に焦点を当てる。本展で初めて発表される新作の一つでは、半田は「匂い」を作品の素材として使うことに挑む。半田が展示会場でお香を焚くことで発生する匂いは、来場者の身体や衣服に付着して「持ち帰られる」こととなり、この匂いはかつて原爆の投下直後に広島にもたらされた残留放射線を暗喩すると同時に、来場者がここ広島で見たことを「持ち帰り」、その香りを嗅いだときにそれぞれの土地で未来の平和に思いを馳せて欲しいという祈りを込める。

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半田颯哉(新作イメージ図)

伊東慧

日本生まれのアーティストで、アメリカ東海岸エリアを拠点に放射線、記憶、生死といった「目に見えないものを可視化する」ことをテーマに活動。祖父が広島で被爆している被爆三世であると同時に、米国移民一世でもある伊東は、アメリカでの核実験による放射性降下物にさらされた被害者であるダウン・ウィンダーに着目しており、そこには放射線の目に見えない恐ろしさを知らずに実験に参加した作業員も含まれる。伊東の作品は歴史の影に隠れている「アメリカの被爆者」の存在を浮かび上がらせる。

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伊東慧《Eye Who Witnessed》(2020 - 2021)

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《Riddle of Peace / War》(2022)

山本れいら

広島出身の母親を持ち、アメリカで高等教育を受けた日本人アーティストで、社会的な権力の存在に焦点を当てて作品を制作。山本の「After the Quake」シリーズは戦後の日米関係を原子力の視点から考察したもので、日本とアメリカの蜜月は原爆投下から始まり、原子力発電技術の輸入により維持され、そして福島第一原子力発電所事故に繋がっていくと言える、この一連の流れを描き出している。山本の作品に描かれる「Postwar is Over(戦後は終わった)」というフレーズは、こうした日米関係の戦後体制を今、改めて見つめ直そうというものであるが、同時に広島という土地においては「世界から全ての原子爆弾がなくなるまで、広島の戦後は終わらない」という広島の思いに呼応する意義も持ちうると言える。

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山本れいら《therefore I want it (Postwar is over)》(2019)

「Take it Home, for (__) Shall Not Repeat the Error.」

会期2023年5月16日から5月22日まで
時間10:00 ~ 19:30
会場そごう広島本館2階特設会場