テーマはアメリカ型資本主義の終焉と日本

アーティストのSohiroが「SUICIDE SNEAKERS COLLECTOR」シリーズで、日本の古典的美意識の一つである「見立て」の手法を新たな解釈で提示した《LOST H OME》、《DEATH IS TRUE》の2作品を公開した。本シリーズのテーマは「アメリカ型資本主義の終焉と日本」。また、シリーズのコンセプトに加え、今年で20年目のメモリアルイヤーとなる「9.11 アメリカ同時多発テロ事件」や、コロナ禍ではBLM運動にまで発展した「人種差別」など、アメリカ型資本主義が生み出した負の遺産からテーマが設けられており、シリーズ共通の「見立て」として、そのアメリカ型資本主義がスニーカーで「擬人化」されるなど、他様々な関連した要素が現代のイコンによって「見立て」られている。

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Sohiro,《LOST HOME》2021

「見立て」とは、ある事柄を別の表現で「置き換える」ことを指す、比喩(メタファー)表現の一種。比喩は文脈との関係によって成立する手法だが、「見立て」は必ずしも文脈を気にしない。子供のごっこ遊びや、記号性の類似だけでも成立してしまう、非常に幅広く寛容な概念であるとSohiroは考えている。有名な禅庭や枯山水は勿論のこと、俳諧、歌、歌舞伎、浮世絵等、遡れば、7、8世紀から現存する『古事記』や『万葉集』には、すでに「見立て」の手法を見出すことが出来るとSohiroは考える。

つまり、「見立て」とは日本独自に発展していった美意識の一つであり、それは、「愛でる」という「鑑賞者」も含み、作り手と受け手、全ての日本人の中にある美的価値観であるのではないかというのである。

「見立て」は、ジャン・ボードリヤールによって広められたシミュラークルという概念に近い。「見立て」はいつも本物ではないからだ。

山口昌男(2003)、『山口昌男著作集 第5巻 周縁』、筑摩書房。

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Sohiro,《DEATH IS TRUE》2021

そのような「見立て」を含む「日本の美意識」の更新がSohiroのアーティストとしての本分であり、初期の作品から通底している。今回、Sohiroが作った「寓話」には大きな設定のコンセプトがあり、そこからイメージしたビジョンを表現するために写真というメディアを使っている。手法が絵画ではなく、写真であるのは、よりリアリティが感じられるメディアだからというシンプルな理由である。そして、「寓話」には「比喩」や「擬人化」「教訓」などの「構造」がある。Sohiroの個別テーマである「9.11」「人種差別」などの「見立て」は言うまでもなく、「メタファー」「シンボル」に加え、「浮世絵」や「禅」などの隠された要素も含み、その「構造」を、様々な要素で構成し、寓話という物語を語っている。

また、コロナ禍での「物理的な展示」は、個人の作家にとって死活問題となっている。Sohiroが様々な作品発表の可能性を模索している中、「非物理的なスペース」 で作品を発表することが一つの展示方法であり、アーティストのホームページだけではなく、他メディアでの公開を通じて、ある意味での公的性を付与できるのではないかと考える。 

Sohiro プロフィール

1976年、兵庫県に生まれる。幼少期からファッションデザイナーに憧れ、1995年から4年間専門学校でファッションを学び、2000年フランス・パリのCREAPOLEでコンセプトメイキングを学ぶ。帰国後はフリーランスのデザイナーと平行し、アート作家としての活動をスタートさせる。2004年「建築的な美」をテーマに、禅的ミニマリズムを反映させたコンクリート作品や、現在も続く「見立て」をテーマにした最初の作品群を製作。同シリーズは、「FASHION DRAWING BIENNALE 2004」での入選や、2006年「GEISAI#9」でスカウト審査賞を3社受賞する。デザインでは、2010年高橋書店から「余白手帳」、2013年アッシュコンセプトから「A4 Uchiwa(団扇)」を販売。2021年「見立て」を扱った「SUICIDE SNEAKERS COLLECTOR」シリーズを発表。アイデンティティからのファッションの視座と、呪縛とも言える国アメリカ。それと対比するかのように「日本の美意識の更新」を天職と考える。日本から西洋、死、エロティシズム...メディアもテーマも表現されたものは一見するとバラバラだが、「縦軸」には必ず日本独自の美意識が連なっている。


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