ナショナルギャラリーの吹き抜けに出現した「通信のための彫刻」

モントリオールを拠点とするアート&デザインスタジオDaily tous les jours(デイリー・トゥ・レ・ジュール)によるインスタレーション作品《Spaghetti Chorus(スパゲッティ・コーラス)》が、カナダ・オタワのナショナルギャラリーで2024年12月20日から2025年3月30日まで展示された。作品は大きな話題を呼び、2025〜2026年冬シーズンの再展示もすでに決定している。

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Spaghetti Chorus
Photo credit: Maryn Devine

本作は、来館者の「声」がリアルタイムで「音楽と光」へと変換される、詩的な通信装置である。会場となったスコシアバンク・グレートホールの天井からは、140メートルにわたる絡み合ったLEDチューブが吊るされ、その両端に設置されたマイクに話しかけることで、色と音の軌跡が空間を横断していく。言葉は旋律となり、音は光となって天井を漂い、見る者・聞く者の間に一瞬のつながりを生み出す。

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Spaghetti Chorus
Photo credit: Maryn Devine

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Spaghetti Chorus
Photo credit: Maryn Devine

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Spaghetti Chorus
Photo credit: Maryn Devine

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Spaghetti Chorus
Photo credit: Maryn Devine

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ナショナルギャラリー・カナダ館長ジャン=フランソワ・ベリルは「Daily tous les joursは、カナダ国内で育まれた創造性を体現し、私たちの象徴的な空間と完璧に呼応している」と語る。光、音、言葉を通して、人々がリアルに交わるための場を創出している。また、共同創設者ムナ・アンドラオスは「この時代、テクノロジーは“つながり”を謳う一方で、私たちをかえって孤立させている。ストリートの向こう側にいる誰かは、世界の果てほど遠くに感じられることもある。だからこそ、見知らぬ他者同士が“奇妙さ”をきっかけに親密さを感じるような、不思議なつながりの瞬間をつくる必要があるのです。」と述べている。さらに、もう一人の共同創設者メリッサ・モンジャも「音楽には、年齢、文化、言語を超える普遍性がある。鑑賞者であっても演者であっても、音楽が共有された瞬間、そこには一種の魔法のような時間が立ち現れる。他者と今・ここの空間を共有することで、人は“存在”を強く実感するのです。」と語っている。

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Spaghetti Chorus
Photo credit: Maryn Devine

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Spaghetti Chorus
Photo credit: Maryn Devine

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Spaghetti Chorus
Photo credit: Maryn Devine

Daily tous les jours

Daily tous les joursは2010年にムナ・アンドラオスとメリッサ・モンジャによって設立されたモントリオール拠点のアート&デザインスタジオ。インタラクティブアート、パフォーマンス、都市体験の再構築に重点を置き、「人間の精神のインフラ」とも称される作品を生み出してきた。代表作には、音の連鎖が楽しめるブランコ《Musical Swings》(2011–2014–2021)、ブダペスト音楽の家のための《Cimbalom Circle》(2022)、ケンブリッジのガスライト地区に設置された《Riverlines》(2023)、ミラノ・フオリサローネで発表された《Duetti》(2024)などがある。