陶芸、建築、音楽で日本文化と黒人文化の新しいハイブリッドを描く、壮大なインスタレーション

森美術館で世界が注目するブラック・アーティストの日本初個展となる「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」が2024年4月24日(水)から9月1日(日)まで開催される。シアスター・ゲイツは米国シカゴのサウス・サイド地区を拠点とし、彫刻と陶芸作品を中心に建築、音楽、パフォーマンス、ファッション、デザインなど、メディアやジャンルを横断する活動で国際的に高く評価されている。

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展示風景:「シアスター・ゲイツ2021-2022年 展:土の説教」ホワイトチャペル・ギャラリー(ロンドン)、
撮影:テオ・クリステリス
画像提供:ホワイトチャペル・ギャラリー(ロンドン)

彫刻と都市計画の教育を受けたゲイツは2004年、愛知県常滑市で陶芸を学ぶために初来日。以来20年以上にわたり陶芸をはじめとする日本文化の影響を受けてきた。日本やアジア太平洋地域での印象深い出会いや発見、そして米国ミシシッピとシカゴにルーツを持つアフリカ系アメリカ人として生きてきた経験が彼の創作の礎となっている。アーティストとして文化的ハイブリディティを探求してきたゲイツは、アメリカの公民権運動(1954 - 1968年)の一翼を担ったスローガン「ブラック・イズ・ビューティフル」と日本の「民藝運動」の哲学とを融合した独自の美学を表す「アフロ民藝」という言葉を生み出す。日本初、そしてアジア最大規模の個展となる本展では、この「アフロ民藝」という実験的な試みを軸に、これまでの代表作と本展のための新作を含む日本文化と関係の深い作品などが紹介される。

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2022年高火度炻器《ドリス様式神殿》
展示風景:「シアスター・ゲイツ展:ヤング・ローズと彼らの軌跡」ニュー・ミュージアム(ニューヨーク)2022-2023年
撮影:クリス・ストロング

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《店頭用サイン》 2018年ネオン114.9 × 114.9 cm
Courtesy: White Cube
撮影:テオ・クリステリス

これまで多数派の声のみが取り上げられてきたことが問い直され、視点の多様化が求められる昨今、グローバルなアートシーンでは第一線で活躍する黒人アーティストたちの表現に見られる多層的な経験が注目されている。本展はゲイツの多角的な実践を通し、世界で注目を集め続けるブラック・アートの魅力に迫る。また、同時に手仕事への称賛、人種と政治への問い、文化の新たな融合などを謳う現代アートの重要性を実感する機会となるかもしれない。

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《ストーニー・アイランド・アーツ・バンク》(外観)
2012年撮影:トム・ハリス 画像提供:ホワイト・キューブ

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《ストーニー・アイランド・アーツ・バンク》(内観)
2012年撮影:トム・ハリス 画像提供:ホワイト・キューブ

私にとって日本の民藝運動は民衆が生み出すものに美を見出し、礼賛するというメカニズムを理解するうえで20年以上にわたり大事な道しるべとなってきました。米国におけるブラック・パワー運動、黒人解放運動と同様、民藝運動は西洋文明が瞬く間に侵食してくるなか、極めて特有な伝統や歴史を大切に守り継ごうとしました。もちろん両者ともに盲点や偏り、さらには否定的な意見を抱えていたわけですが、共通していたのは地域性を称え、美への意識を高め、文化の力を尊ぶ揺るぎない態度でした。「アフロ民藝」とは、私の芸術の旅路においてこの2つの最も重要な運動を融合させる試みなのです。

シアスター・ゲイツ

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《ザ・リスニング・ハウス》2022年
展示風景:国際芸術祭「あいち2022」 
撮影:ToLoLo studio※参考図版

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《へヴンリー・コード》2022年
レスリースピーカー、ハモンドオルガン「B-3」、サウンド サイズ可変
撮影:ジム・プリンツ・フォトグラフィー

シアスター・ゲイツ プロフィール

1973年米国イリノイ州シカゴ生まれ、同地在住。アイオワ州立大学と南アフリカのケープタウン大学で都市デザイン、陶芸、宗教学、視覚芸術を学ぶ。土という素材、客体性、空間と物質性などの視覚芸術理論を用いて、ブラックネスの複雑さを巧みに表現している。2004年愛知県常滑市「とこなめ国際やきものホームステイ」(IWCAT)への参加を機に、現在まで20年にわたり常滑市の陶磁器の文化的価値と伝統に敬意と強い関心を持ち、陶芸家や地域の人々と関係を築いてきた。

「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」開催概要

会期2024年4月24日(水)から2024年9月1日(日)まで
会場森美術館
時間10:00 ~ 22:00
URLhttp://tinyurl.com/5ccz54x7