直島鑑賞のすすめ

2022年8月5日(木)から9月4日(日)にかけて、瀬戸内国際芸術祭2022の夏会期が始まります。そこで、今回は瀬戸芸期間中に直島を見て回ろうと考えられている方向けの記事を書かせていただこうと思います。

今年は新型コロナウィルス感染症が流行している影響もあり、例年より鑑賞に訪れられる方が少なくなっているようですが、それでも多くの観光客が直島を訪れようとして、混雑することが予想されます。

例年、乗る予定だったフェリーやバスが満杯で乗れず予約の時間に間に合わなかった、見に行きたかった美術館の予約がいっぱいで見れなかった、待ち時間が長くて全ての作品を見て回れなかったなど、芸術祭期間中ならではの問題もよく起こっています。

そのような事態を避けるために、予約が必要な施設(美術館)はちゃんと予約しておき、一本早めのフェリーに乗るなど、余裕を持って行動されることをお勧めします。

また、直島島内には十分な医療設備がないため、滞在中に新型コロナウィルスなどの感染症が発症したり、熱中症や事故などで倒れたりしたときに、必要な治療がすぐに受けられなかったり搬送に時間がかかったりすることがあります。

住民の方々へ迷惑をかけないためにも、鑑賞に訪れる際には感染症対策や熱中症対策をしっかりと行い、持病等のある方は薬を忘れずに持ってくるなどの対応を心がけください。

直島にある作品や施設の多くは芸術祭期間外でも鑑賞可能ですが、李禹煥美術館、家プロジェクト、ANDO MUSEUM、ベネッセハウス ミュージアムおよびヴァレーギャラリー、宮浦ギャラリー六区は瀬戸内国際芸術祭2022の作品鑑賞パスポート(3シーズンパスポート5000円・会期限定パスポート4200円)に鑑賞料が含まれているため、パスポートを購入されている方は芸術祭期間内に合わせて鑑賞した方がお得になっています。

※地中美術館、杉本博司ギャラリー 時の回廊、直島銭湯「I♥湯」、家プロジェクトの「きんざ」はパスポートを持っていても別途鑑賞料が必要になります。また、地中美術館、杉本博司ギャラリー 時の回廊、家プロジェクトの「きんざ」は予め予約をしておく必要があります。

まず私が直島で最初にお勧めしたいのは、下道基行さんが作品を企画・監修されている、宮浦ギャラリー六区の ≪瀬戸内「   」資料館≫ です。

「   」の中にはそのときの企画・展示のテーマが入り、瀬戸内海地域の景観や風土、民族、歴史などについて、アーティストの下道基行さんが瀬戸内海地域に住む人々や各分野の専門家と交わりながら調査・収集・展示を行なって、資料館を作り上げていきます。

これまでは、2019年の ≪瀬戸内「緑川洋一」資料館≫、2020年の ≪瀬戸内「百年観光」資料館≫、2021年の ≪瀬戸内「鍰造景」資料館≫といった内容の展示が行われ、いずれも興味深く充実した内容の展示でした。

通常、アーティストが地域をリサーチして作品を制作する場合、リサーチによって得た情報に作家のインスピレーションやフィクションを織り交ぜて作品というかたちに仕上げていくことが多いのですが、この ≪瀬戸内「   」資料館≫ では、収集した資料をアーティストならではの視点・手法で公開しています。

夏・秋会期は瀬戸内の風景を記録し続けた直島生まれの写真家「中村由信」と、彼が友人たちとつくった写真団体「直島どんぐりクラブ」にフォーカスをあてた、 ≪瀬戸内「中村由信と直島どんぐりクラブ」資料館≫が開催されています。

瀬戸内「   」資料館

公開時間:10:00~17:00 月曜休館(月曜が祝日の場合は翌日休館)
鑑賞料金:520円(※瀬戸芸パスポートに鑑賞料金が含まれています。15歳以下無料)

次におすすめなのが、建築家 三分一博志によるThe Naoshima Plan 「水」です。

この建築は、島全体の風・水・太陽といった「動く素材」を浮き上がらせ、その美しさや大切さを再認識してもらい、次世代へ継承することを目的とした構想 “The Naoshima Plan” の一環として改修が行われた建物の一つで、直島の本村地区の家屋の特徴である南北の続き間を顕在化させ、庭に豊富な井戸水を湛える水盤が設置されています。

南北に開け放たれた座敷に腰掛け吹き抜ける風を感じながら、水盤の水に足を浸し、目と肌で直島の光や風や水を感じることのできる心地よい場所です。

鑑賞される場合は濡れた足などを拭き取る手拭いなどを持参された方が良いですが、現地にてオリジナル手拭いを購入することも可能です。

The Naoshima Plan 「水」

公開時間:11:00~16:00
鑑賞料金:無料

ちなみに、春会期に公開されていた建築家 三分一博志によるThe Naoshima Plan 「住」は夏会期は公開されておりませんのでご注意ください。次回の公開は秋会期(9月29日~11月6日)になります。

また、三分一博志による “The Naoshima Plan”の一環として手掛けられた建物には、ホール・集会所・庭園からなる多目的施設である「直島ホール」もありますが、島民が使用するための施設であるため、普段は外観を眺めることしかできませんが、外から総檜葺きの屋根を眺めるだけでも見応えがあります。

直島に以前も来たことがあるいう方は、ベネッセハウス ミュージアムや地中美術館、李禹煥美術館、家プロジェクト、ANDO MUSEUMおよび屋外に展示されている常設作品の多くは鑑賞済みかとおもわれますが、李禹煥美術館には2019年7月に屋外作品の「無限門」が新たに設置され、今年2022年にはヴァレーギャラリーと杉本博司ギャラリー 時の回廊が新たにオープンするなど、すでに直島に来たことのある方も楽しめる新たな作品や施設も増えました。

ヴァレーギャラリーはベネッセハウス ミュージアムの一環として、李禹煥美術館の近くに新たに建てられた安藤忠雄設計の建物を含むギャラリーです。

屋外には小沢剛の「スラグブッダ88 -豊島の産業廃棄物処理後のスラグで作られた88体の仏」が恒久展示されているほか、現在は屋内外に草間彌生の「ナルシスの庭」が展示されています。

風がほどよく吹いているタイミングで池に無数の球体が浮かんでいる「ナルシスの庭」の様子を鑑賞すると、風と共に刻々と姿が変わるダイナミズムに思わず見入ってしまいます。

「ナルシスの庭」は恒久設置作品ではなく、数年毎に展示替えが行われる予定だとのことなので、次回(三年後)の芸術祭のときには別の作品が展示されている可能性がありますでの、お見逃しのないようお気をつけください。

ヴァレーギャラリー

公開時間:9:30~16:00
鑑賞料金:ベネッセハウス ミュージアムの鑑賞料金1300円に含む

(※ヴァレーギャラリー現地でもベネッセハウス ミュージアムのチケットを購入可能。瀬戸芸パスポートに鑑賞料金が含まれているのでパスポートを持っている方はチケット不要です。ベネッセハウス宿泊者と15歳以下無料)

杉本博司ギャラリー 時の回廊 は、今回ギャラリーとして公開される以前からベネッセハウスの宿泊者のみ鑑賞・利用可能なギャラリーおよびラウンジとして杉本博司の作品が展示されていたものが、一般の鑑賞者も鑑賞料を払って入れるようになったかたちですが、新たに屋外に「硝子の茶室『聞鳥庵』」も設置され、展示内容も以前より充実しています(ラウンジでお茶とお菓子をいただくことができますが、茶室の中に入ってお茶菓子をいただくことはできません)。

開館時間が11:00~15:00までと短く、予約制なのでご覧になりたい場合はお早めにご予約ください。

杉本博司ギャラリー 時の回廊

公開時間:11:00~15:00
鑑賞料金:1500円(※お茶とお菓子付き。瀬戸芸パスポート対象外のため、別途鑑賞料が必要です。ベネッセハウス宿泊者と15歳以下無料。宿泊者と15歳以下の方がラウンジでお茶菓子を希望される場合は別途料金がかかります)

要予約(予約はベネッセアートサイト直島公式ホームページにて)

また、美術館とホテルが一体化した、泊まれる美術館であるベネッセハウス ミュージアムと、ベネッセハウス パークに併設する杉本博司ギャラリー 時の回廊は、宿泊者特典としてベネッセハウスへの宿泊者のみ23時まで鑑賞することができます。

例えば杉本博司ギャラリー 時の回廊内の中庭に設置された「観念の形 003 オンデュロイド:平均曲率が0でない定数となる回転面」という作品は、見る時間によって外の明るさの影響を受けて作品の表情を変えていくので、日中と夜とで見比べてみるのも面白いと思います。

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杉本博司"観念の形 003 オンデュロイド:平均曲率が0でない定数となる回転面"
写真:杉本博司

また、ベネッセハウス ミュージアムに展示されているブルース・ナウマンの「100生きて死ね/100 Live and Die」や安田侃の「天秘」など、日中と夜とで印象が変わる作品は他にもあり、宿泊される方やお時間のある方は、日中と夜の二回訪れて作品を見比べる贅沢な鑑賞の仕方を楽しむことができます。

ベネッセハウスの宿泊はとても人気のため、泊まりたい方は数ヶ月前から予約をしておくことを推奨します。

ベネッセハウス ミュージアム内に宿泊者用の客室があるほか、ミュージアムからモノレールで移動した丘の上にあるオーバルと、海岸沿いに建つパークとビーチという二棟の宿泊棟もあります(宿泊予約はベネッセアートサイト直島公式ホームページから行えます)。

客室内および宿泊者しか利用できないエリアに展示されている作品は、宿泊者のみに鑑賞が許された宿泊者特典です。

私はベネッセハウス ミュージアム内の客室に泊まったことがありますが、客室内は清潔で広く、ベランダからは海や屋外の作品が見え、備え付けの設備にはテレビの代わりにBOSEの高音質プレイヤーが設置されていて、ゆったりとした時間を過ごすことができる環境でした。

夜の美術館はタイミング次第ではほとんど人がいなくなり、作品から出る音声や駆動音だけが響き渡る静かな美術館の中を他の人を気にせずゆっくり鑑賞できます。

ベネッセハウス ミュージアム

公開時間:8:00~21:00
鑑賞料金:1300円(※ヴァレーギャラリーの入館料含む。瀬戸芸パスポートに鑑賞料金が含まれています。ベネッセハウス宿泊者と15歳以下無料)

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ベネッセハウス ミュージアムの客室

直島を巡って作品を見て回ったら、夜9時まで営業してる直島銭湯「I♥湯」で大竹伸朗のインスタレーション空間を楽しみながらお風呂に浸かってサッパリして帰るのもおすすめです。

男湯と女湯で中の空間が違うので、両方見てみたいという方は13:00~15:50のあいだ行われる浴室見学会に参加されるといいでしょう。

浴室見学会のあいだは入浴することはできませんが、見学会中のみ男湯と女湯の両方を見学・写真撮影することができます。

ちなみに、タオルの貸し出しはされていませんが、番台で直島銭湯オリジナルの今治タオル(1380円)を購入可能です。シャンプー・石鹸は備え付けられています。

直島銭湯「I♥湯」

公開時間:13:00~21:00 月曜休館(月曜が祝日の場合は翌日休館)
鑑賞(入浴)料金:660円(※瀬戸芸パスポート対象外のため、別途鑑賞料が必要です。15歳以下310円、3歳未満無料)

直島の見どころとなる作品や施設(美術館)は他にも沢山ありますが、全てを事細かに紹介すると長くなり過ぎてしまうので、以下に主な情報をまとめさせていただきます。

地中美術館

公開時間:3月1日~9月30日 10:00~18:00/10月1日~2月末日 10:00~17:00 月曜休館(月曜が祝日の場合は翌日休館)
鑑賞料金:2100円(※瀬戸芸パスポート対象外のため、別途鑑賞料が必要です。15歳以下無料)

要予約(予約はアートサイト直島公式ホームページにて)

安藤忠雄設計による美術館の中に、クロード・モネや、現代アーティストのジェームズ・タレルおよびウォルター・デ・マリアの作品が恒久設置されています。

一度に室内に入れる人数が限られている作品もあり、混雑時には待ち時間が発生する可能性もあります。

李禹煥美術館

公開時間:3月1日~9月30日 10:00~18:00/10月1日~2月末日 10:00~17:00 月曜休館(月曜が祝日の場合は翌日休館)
鑑賞料金:1050円(※瀬戸芸パスポートに鑑賞料金が含まれています。15歳以下無料)

「もの派」で有名な李禹煥の作品を収蔵している美術館。

ANDO MUSEUM

公開時間:10:00~16:30 月曜休館(月曜が祝日の場合は翌日休館)
鑑賞料金:520円(※瀬戸芸パスポートに鑑賞料金が含まれています。15歳以下無料)

築約100年の木造民家と安藤忠雄によるコンクリート建築が組み合わさった空間に、安藤忠雄の活動や直島で手掛けた建築物についての資料、直島の歴史などが展示されています。

家プロジェクト

公開日時:10:00~16:30 月曜休館(月曜が祝日の場合は翌日休館)
鑑賞料金:共通チケット(「きんざ」を除く6軒を鑑賞)1050円/ワンサイトチケット(「きんざ」を除く1軒のみを鑑賞)420円/「きんざ」520円 (※「きんざ」以外は瀬戸芸パスポートに鑑賞料金が含まれています。15歳以下無料)

「きんざ」のみベネッセアートサイト直島公式ホームページから予約が必要です。

家プロジェクトは直島・本村地区において展開するアートプロジェクトです。宮島達男の「角屋」、ジェームズ・タレルの「南寺」、内藤礼の「きんざ」、杉本博司の「護王神社」、千住博の「石橋」、須田悦弘の「碁会所」、大竹伸朗の「はいしゃ」の7軒が公開されており、各作家が空間そのものを作品化したインスタレーションを楽しむことができます。

一度に入場できる人数が限られている作品もあり、混雑時には待ち時間が発生する可能性もあります。

直島港ターミナル

SANAA(妹島和世+西沢立衛)によって手掛けられた、直島の本村にある旅客船の待合室。
巨大なFRP製の球体が組み合わさってできたモコモコとした形が特徴的。
家プロジェクトやThe Naoshima Plan 「水」など、本村周辺の作品から近い港です。

海の駅「なおしま」

SANAA(妹島和世+西沢立衛)によって手掛けられた、直島の宮浦港のフェリーターミナル。
中には待合所やトイレ、観光案内所、カフェ、特産品販売店が設置されており、直島の玄関口として機能しています。
近くには宮浦ギャラリー六区や直島銭湯「I♥湯」などがあります。

赤かぼちゃ

宮浦港に設置された、草間弥生の代表作でもあるかぼちゃのオブジェの一つです。赤いかぼちゃには何箇所か穴が空いており、中に入ることもできます。
ちなみに、ベネッセハウスの屋外に展示されていた草間彌生の黄色い「南瓜」は現在展示が中止されています。

直島パヴィリオン

藤本聡介による、三角形のステンレスメッシュによって構成された「浮島現象」をかたどった構造物。中に入ることもできます。
宮浦港の近くにあります。

その他にも、ベネッセアートサイト直島の敷地内や直島島内には多くの屋外常設作品や、島民や移住者がベネッセアートサイト直島や芸術祭とは関係なく設置している作品が多くあります。ここでは全てを紹介しきれないので省略いたしますが、気になる方は瀬戸内国際芸術祭2022の公式ガイドブックやベネッセアートサイト直島公式ホームページで確認したり、近くの方に尋ねてみたりされると良いでしょう。

ぜひこの機会に直島での芸術鑑賞をお楽しみください。


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