すべての表現を越えて鳴り続ける“静かなロカビリー”の魂に触れる
ミッキー・カーチスの個展「ハッピーペインター ミッキー・カーチス アート展」が渋谷のY2 STUDIOで、2025年11月7日から11月17日まで開催されている。会場は代々木の静かな住宅街に佇むマンションの一室。扉を開けた瞬間に広がるのは、鮮やかな色彩と愛にあふれた空間となる。壁一面を覆う絵画には、色面と線が軽やかに弾み、まるで音楽のように脈打っている。来場者のざわめきと作品が共鳴する中、コーラを片手に笑顔で言葉を交わすミッキー・カーチスの姿がある
1950年代、まだ“ロック”という概念すら日本に根づいていなかった時代に、ロカビリーというスタイルを持ち込み、音楽シーンを駆け抜けた彼は、その後も俳優、レーサー、落語家など、さまざまな表現のフィールドを軽やかに横断してきた。絵筆を手にしたのは77歳。いまやキャンバスは、彼の“ステージ”となっている。
今回展示されている作品は160点以上にのぼるが、これは彼の全作品のおよそ3分の1に過ぎないという。代表的なシリーズでは、動物たちの顔を真正面から捉えたポップな絵が並び、そこには無邪気さと誇り、そしてどこか懐かしさを感じさせるあたたかさが宿る。長年の舞台経験に裏打ちされた呼吸のリズムが、筆致にも息づいている。
また、タイでの暮らしの記憶をにじませた作品群も印象的だ。湿った空気や陽射しの残像のような色彩が絵の中に揺らぎ、見る者をノスタルジーとサイケデリアのあわいへと誘う。入院中の心電図パッチを素材に用いた作品や、麻酔中に見た光景、戦時中の記憶など、個人的な体験さえも軽やかにアートへと昇華している。生と死の境界すらも、彼にとってはひとつの表現のフィールドであるかのよう。
来場者は幅広く、年配のファンが懐かしそうに作品を見上げる姿もあれば、子ども連れの家族が絵本のように楽しむ光景もあった。誰もが自然と笑顔になり、会場には小さな幸福感が流れている。
「ハッピーペインター ミッキー・カーチス アート展」開催概要
| 会期 | 2025年11月7日(金)から11月17日(月)まで |
| 時間 | 12:00〜19:00(会期中無休) |
| 会場 | Y2 STUDIO |
| URL | https://tinyurl.com/mr2e5z7m |

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