7つの振り子の群れによるキネティック・サウンドインスタレーション
同期現象という物理現象を利用した「syncrowd - seven chorus(シンクラウド - セブンコーラス)」が2022年4月2日(土)から4月10日(日)まで、横浜赤レンガ倉庫1号館にて開催される。人類による「自然そのものを理解する」ための探究活動は、これまで科学や芸術などに細分化されながら発展してきた。一方で自然の中にはいずれの分野でも掬いきれない未分化な領域が潜んでいることも事実である。
Creative Label nor(ノア)は科学と芸術の間にあるジレンマに焦点をあて、いずれをも否定することなく新たな価値を創造するべく活動を行っている。本展「syncrowd - seven chorus(シンクラウド - セブンコーラス)」では、会場内に大小様々な7つの振り子の群れ"syncrowd"が点在している。"syncrowd"は、ホタルの発光や集団での拍手の同期など、日常でもしばしば見られる「同期現象」という物理現象を利用したキネティック・サウンドインスタレーション。各振り子は、フレームの振動を通じて互いに干渉しあいながら「振り子の群れ(crowd)」を形作っており、その中で各振り子は物理法則に則ってまるで制御されているかのように同期(sync)していく。
会場内の7つの"syncrowd"は大きさによってそれぞれ独自のテンポで同期/非同期を繰り返し、振り子がもたらすシンプルな音の反復が、干渉/揺らぎ(chorus)によって連続的にパターンを変化させ、会場全体で永続的に変化し続ける複雑な音のうねりを生み出す。その様は一見するとより原初的な聖歌/合唱(chorus)のようでもあり、統制されたオーケストレーションのようでもある。しかし本作品では絶対的な統率力であるコンダクター(指揮者)不在のなか、自己組織的な在り方でそれを形作る。物理現象が作る有機的な視覚・聴覚体験の中で歩き回ったり立ち止まったりしながら森羅万象を司る自然の摂理に耳を澄ませ体感することで、自由な想像と独自の発見をすることができる。
令和3年度メディア芸術クリエイター育成支援事業採択企画展示
本展はメディア芸術クリエイター育成支援事業・国内クリエイター創作支援プログラムの支援を受けて行われ、若手クリエイターの創作活動を支援することにより次世代のメディア芸術分野を担うクリエイターの水準向上を図るとともに育成環境を整備することを目的としている。文化庁メディア芸術祭において受賞作品もしくは審査委員会推薦作品に選ばれた若手クリエイターによる新しい作品の企画の中から公募によって採択される。専門家からのアドバイスや技術提供をはじめとした育成支援、国内外のクリエイターとの交流会、成果発表の機会の提供や制作費など様々な形で本展の具体化が支援されている。
Creative Label nor について
科学者、音楽家、建築家、プログラマー、エンジニア、ロボットエンジニア、デザイナーなど多様なバックグラウンドをもつメンバーによって2017年に発足。活動の背景には自然現象をつかさどる普遍の法則(ピュシス)への憧れや畏怖がある。現代社会において様々な自然法則についての科学的な研究が進み、テクノロジーを通して日常生活にも取り入れられてきたが、一方でこういった科学的方法では掬いきれない断片が数多く存在していることも事実である。Creative Label norは一般化された定義では捕捉しきれない領域へのアプローチを行い、最先端研究で扱われる内容や自然哲学を多くの人が体験できる形に変換して社会的な価値としてアップデートすることを目的に、空間/映像/サウンドなど多様な表現領域における手法と技術の混交によるインスタレーション作品を制作している。活動を先進的に進めることにより「科学と芸術のアウフヘーベン」を実践し、科学でも芸術でも到達することはできない真の自然法則(ピュシス)の存在を体感させるような新しい表現・文化の創出を目指している。
「syncrowd - seven chorus(シンクラウド - セブンコーラス)」展覧会概要
会場 | 横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール |
会期 | 2022年4月2日(土)から4月10日(日)まで ※2022年4月6日(水)は休館 |
開場時間 | 11:00-20:00 ※最終日は17:00まで |
入場料 | 無料 |