100人を超えるデザイナー、アーティスト、建築家が、スポーツを通してアイデンティティ、競争、達成、集合的文化を考察
イスラエルを代表する現代デザインのパブリックイベント「エルサレム・デザイン・ウィーク(JDW)」の第15回が、2026年7月9日(木)から16日(木)まで、エルサレムの歴史的建築、ハンセン・ハウスを会場に開催された。「Match Point」をテーマに掲げた今回は、100人を超えるデザイナーが参加し、スポーツと現代文化の関係を考察する数十の新作展、インスタレーション、プロジェクトが発表された。

JDW 2026 Poster
Photo credit: Graphic Design: The League - Koby Levy, Shmuel Apter, Adi Weintraub, Shai Blau, Eden Ishay, Achinoam Reshef, Mor Messeri | Studio Perks & Such: Adi Baron, Elad Star
プログラムでは、競技スポーツを切り口に、卓越性、競争、帰属意識、規律、権力、レジリエンスといった概念を考察した。スポーツを単なる身体的な競争として捉えるのではなく、個人のアイデンティティと集団の価値観が表現される、より広い文化的な場として位置づけている。この考察において、デザインは重要な役割を担った。チームカラー、シンボル、旗、ファングッズ、ユニフォームなどはコミュニティとしての意識を形成すると同時に、個人を集団のアイデンティティの中に位置づける。また、トロフィーやメダル、優勝リボン、記念品など、勝利をめぐる物質文化も、達成や成功という抽象的な概念を具体的な形へと変換する。
さらに展覧会では、身体の計測・監視におけるテクノロジーの役割にも焦点を当てた。身体の動きやパフォーマンスを追跡・計測するシステムは、それらをデータへと変換し、身体を単に「観察するもの」から、継続的に「監視し、比較し、評価するもの」へと変化させている。
プログラムの中心となったのが、HQ Architectsによる「Pit」だ。スポーツ競技場における感情的・社会的なダイナミクスをテーマに、観客として見る行為の建築や集団参加のあり方を考察するとともに、競争が生み出す心理的な緊張にも目を向けた。
「Hall of Fame」では、トロフィー、メダル、記念品、成功に対する想像的な解釈を通して、勝利と達成というテーマを掘り下げた。ビナ・バイテル、カーラ・ラタウス、ロン・ヨセフをはじめとする国際的およびイスラエルのデザイナーの作品を通して、勝利や達成に対する多様な視点を提示。栄光を、ユーモラスであったり、哀愁を帯びたり、絶対的であったり、あるいは議論の余地を残したりする複雑で矛盾をはらんだ体験として捉えた。さらに、それは集団で共有される場合もあれば、個人で味わうものでもあることを示した。

Hall of Fame, Carla Rataus, Bina Baitel, Ron Yosef, Hodaya Ben Eliahu, Anat Golan
Photo credit: Dor Kedmi

Maccabiah: An Alternative Visual History
Bezalel Academy of Arts and Design Jerusalem, Sports Diplomacy Research Center, Ben-Gurion University of the Negev, The Iris Smith World Jewish Sports Museum
Photo credit: Dor Kedmi
もうひとつの主要プロジェクト「The Matchmaker」は、エルサレムを拠点とするデザイナーと地元のサッカーファンを結びつける、JDWの長年にわたる協働プロジェクトを継承したもの。アーティスティックディレクターのイタイ・ヤアコフのもと、衣服、応援グッズ、グラフィックデザイン、写真を通して、エルサレムにおける現代のスポーツ文化を記録した。
このほか、東京を拠点とする建築スタジオNOIZによる「All Eyes on You」、オルタル・バレル、ミッキー・ケイダー、メラヴ・オフリ・ヴァックスの作品、ベツァレル美術デザイン学院との協働プロジェクト、アレクサンダー・フルフトの作品など、多数の展覧会やインスタレーションがハンセン・ハウスで紹介された。
展覧会と並行して、講演、トーク、パフォーマンス、ガイドツアー、上映会、ワークショップ、ライブイベントなどのパブリックプログラムも実施された。デザイナー、研究者、アーティスト、アスリート、音楽家、来場者らが交流し、展覧会で扱われたスポーツをめぐる問いを、アイデンティティ、コミュニティ、競争、文化といったより広いテーマへと発展させた。
- Transparency, Alexander Frukht Photo credit: Dor Kedmi
- Transparency, Alexander Frukht Photo credit: Alexander Frukht
「Match Point」は、スポーツを単なる競技の場ではなく、現代社会を考察するための視点として提示した。そしてデザインを通して、スポーツを取り巻く社会的・文化的な関係を可視化する試みとなった。
- NAIL GAME – Libi Podolich Photo credit: Dor Kedmi
- NAIL GAME – Libi Podolich Photo credit: Libi Podolich
- Home Ground, Dor Kedmi Photo credit: Dor Kedmi
- Home Ground, Dor Kedmi Photo credit: Dor Kedmi
- Victory Gate, Bina Baitel (Paris) Photo credit: Dor Kedmi
エルサレム・デザイン・ウィーク
2011年にスタートしたエルサレム・デザイン・ウィークは、現代デザインに特化したイスラエル最大かつ最も影響力のあるパブリックイベント。イスラエル国内外の著名なデザイナーによる展覧会、インスタレーション、パブリックプログラム、コラボレーションを紹介している。ハンセン・ハウスの主要プロジェクトとして、新作の制作を委嘱するとともに、エルサレムをはじめとする地域のデザイン文化の発展を促進している。
毎年ひとつの中心テーマを設定し、世界的な文脈にもつながる地域固有の現実を掘り下げている。分野を横断して活動するデザイナーを招き、各年のテーマに応答するオリジナルプロジェクトの制作を依頼。ハンセン・ハウスを、実験や批評的な議論、国際的な対話のためのプラットフォームへと変えている。
エルサレム・デザイン・ウィーク2027の公募は2026年12月に開始される予定で、次回開催に向けたデザイナーやクリエイターからの提案が今後募集される。
エルサレム・デザイン・ウィークは、エルサレム省およびエルサレム開発庁のイニシアチブとして、ハンセン・ハウスとRan Wolf Ltd.が共同で運営・制作している。

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