ラバー・ダック・プロジェクトで知られるフロレンティン・ホフマンが日本初個展へ

ホワイトストーン・ギャラリー銀座新館では、国際的に著名なオランダ人アーティスト、フロレンティン・ホフマンによる個展「MORE Yellow」を2023年6月16日(金)から7月15日(土)まで開催する。阪神淡路大震災からの復興を讃えて兵庫県立美術館の屋上に設置された《Kobe Frog》や、大阪での「中ノ島ウェスト・ラバー・ダック2022」プロジェクトなど、日本と縁深いフロレンティン・ホフマン。adf-web-magazine-rubber-duck-project-more-yellow-32023年6月にはバストイで愛されているラバーダックを巨大化した「Rubber Duck」シリーズの最新インスタレーションが香港で着々と進行ている。世界中に停泊した極大サイズの「ラバー・ダック」に代表されるように、「黄色」はホフマンが最も好む色のひとつである。黄色は有彩色のなかで最も明るい色というだけでなく、「遊び心」「コミュニケーション」「聴覚の刺激」などといったポジティヴなイメージの連鎖とむすびついている。そもそも、ホフマンの制作信条は、アートにまつわる近寄り難さを取り除き、人々にアートへのアクセスを容易たらしめ、子ども時代の楽しい記憶を喚起することにある。彼は日常のありふれたものをシンプルな視点で捉えなおし、観る者の心地よさへと挑む。「楽しさに満ちた明快さ」こそ普遍的な美学であり、人種・宗教・ジェンダー・年齢、といったあらゆる縛りを乗り越え、差異を超越しての意志疎通を可能たらしめる。今展では、最愛の色である「黄色」をもとに、形態や大きさが異なる、ヴィヴィッドな色彩をまとう動物たちがギャラリーの白壁に配置される。「黄色」がもつ遊戯性は、色彩間の補色作用により増幅される。観る者の絶えまない感情の変化を反映しながら。ホフマンの世界が具現するリアリティの豊かな局面の数々、それらは無限大である。

adf-web-magazine-rubber-duck-project-more-yellow-4

フロレンティン・ホフマン《Rubber Duck》2013, Hong Kong Photo courtesy of AllRightsReserved

adf-web-magazine-rubber-duck-project-more-yellow-1

フロレンティン・ホフマン《Double Ducks》2023, Hong Kong Photo courtesy of AllRightsReserved

心を開くことを忘れるな。

大きな子どものように自由であれ

フロレンティン・ホフマン

フロレンティン・ホフマン(Florentijn Hofman)

オランダ人アーティスト、フロレンティン・ホフマンは2000年にオランダのカンペン芸術アカデミーで学んだ後、ベルリンへ渡りヴァイセンゼー芸術大学で芸術修士号を取得。ホフマンは観客が感じる「心地良さ」に挑むことを目標とし、日常のありふれた物質をシンプルな知覚で捉えなおすことで表現している。彼の作品から醸し出される親しみやすさと積極性によって、観客はさりげなく自然にアートを楽しむことができる。のちに彼は、明確で象徴的なイメージへと制作を結実させる。そのサイズ感と素材使いによって疎外感すら与えるような「ラバー・ダック」(2007年)に代表される奇妙なほど巨大な“おもちゃ”。空気注入式の特大サイズで実現されたラバー・ダック風呂用玩具は、フランスからブラジル、ニュージーランドから香港、ピッツバーグからチリのサンティアゴと、世界の港を股にかけて人々の目を楽しませた。ホフマンが自らの周辺環境へ注ぐまなざしは、素材の可能性の深い考察と、形状と姿容への探求へと導いた。彼は地場の文化を作品のなかへ溶け込ませることにより想像力を拡張させ、見落とされがちな相互作用を喚起する。社会的関与と相互コミュニケーションがホフマンの創造にとって核となる要素である。公共のスペースに作品を設置するという情熱を共有することで、自身の普遍的美学と観客との邂逅の場をつくり出している。ホフマンによってもたらされる純粋な歓びは、人種や宗教といった垣根を取り払い、作品との対話へと人々を没入させる。制作領域を広げることで、ホフマンは平等と自己というもののちっぽけさを投影しようとしている。

フロレンティン・ホフマン個展「MORE Yellow」

会期2023年6月16日(金)から7月15日(土)まで
会場ホワイトストーンギャラリー銀座新館
時間11:00 ~ 19:00
休館日曜 / 月曜