奈良女子大学 長谷研究室の学生が約140点を再構成し AIや3D技術を通して写真表現の可能性を探る
写真家・森山大道の作品を奈良女子大学の学生が独自の視点から選定・再構築する展覧会「複製される感性-森山大道」が、東京都写真美術館で2026年9月5日から10月18日まで開催される。東京都とアーツカウンシル東京による「TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト」の一環として、東京都写真美術館が収蔵する作品を中心に約140点を展示。奈良女子大学工学部 長谷研究室の学生によるキュレーションに加え、AIや3D都市モデル、デジタルアーカイブを活用し、森山大道の写真が次世代の感性によってどのように読み替えられるのかを探る。

左:《ポスター(中野)》〈東京〉より、1968-80年頃、右:《三沢の犬》(部分)、1971年、掲載作品はすべてゼラチン・シルバー・プリント、東京都写真美術館蔵 ©Daido Moriyama Photo Foundation ※掲載作品画像はデザイン上加工したものであり、実際の作品とは色調等が異なります。
森山大道の写真を学生の視点で再構成
本展は森山大道写真財団の協力により、2025年に入江泰記念奈良市写真美術館で開催された「複製される感性 DAIDO MORIYAMA by NWU Nagatani Lab. Monika Orpik」の巡回展として企画。今回は同展の作品に加え、東京都写真美術館が所蔵する《三沢の犬》《青山》《帽子》など森山大道の写真を、奈良女子大学工学部 長谷研究室の学生がそれぞれの視点から選定。作品選定からテーマ設定、展示構成まで学生自身が携わり、約140点を再構成する。森山大道が切り取った都市や人物のイメージを、完成された写真作品として鑑賞するだけでなく、複製、編集、再配置といった行為を通して新たに読み直すことを試みる。
工学とアートから写真を読み替える
奈良女子大学工学部 長谷研究室は、先端技術と造形芸術の融合を軸に新たな表現を研究する研究室。2023年度からは入江泰記念奈良市写真美術館と連携し、アートに関わる人材育成プログラムを展開している。本展では、学生たちが現代的な感覚や工学的発想を取り入れながら、森山大道の写真を再解釈する。
写真を複数の面へ貼り分けた立体作品《Copy/Scatter》では、写真が印刷され、複製され、消費されていく連鎖そのものを可視化する。また《光と影(1982年)》をもとにした展示では、写真と額装、ルーペなどを組み合わせ、森山が撮影時に感じていたと想像される視覚や身体感覚を空間として表現する。

AIが写真のフレーム外を想像する
AIを用いた映像作品《The world of DAIDO MORIYAMA shown by AI》では、4冊の写真集から選んだ7点をもとに、写真に写されていない時間や空間の再構築を試みる。森山大道がシャッターを切った瞬間、そのフレームの外側では何が起きていたのか。撮影された人物はどこから来て、どこへ向かったのか。学生たちは画像生成AIを活用し、静止した写真を出発点として、写真に記録されなかった風景や時間を想像する。AIを作品そのものの代替として扱うのではなく、写真を見る行為や想像する行為を拡張するための装置として用いる点も本展の特徴となる。
都市空間と写真をつなぐデジタル展覧会
本展は東京都写真美術館での実物展示に加え、「Tokyo Museum Collection(ToMuCo)」上でもデジタル展覧会を開催する。3D都市モデルを活用し、鑑賞者は都市を俯瞰しながら、森山大道が写真を撮影した場所へ仮想的に移動することができる。撮影地点に立つことで、写真に切り取られた過去のフレームと現在の都市風景を重ね合わせる仕組み。森山大道の「撮る身体」と鑑賞者の「見る身体」を同じ都市空間へ重ねることで、写真と場所、時間との関係を再発見する鑑賞体験を生み出す。さらに虎ノ門、渋谷、新宿ではデジタルサイネージを活用した展示も展開。AIによって動きや時間を与えられた森山大道の写真を都市空間へ映し出し、美術館の外へと鑑賞体験を拡張する。
森山大道 プロフィール
1938年大阪府池田市生まれ。デザイナーから写真家へ転身し、岩宮武二、細江英公の助手を経て1964年に独立。1967年に『カメラ毎日』で発表した「にっぽん劇場」などのシリーズにより日本写真批評家協会新人アワードを受賞した。粗粒子、高コントラスト、ブレやボケを特徴とする写真表現で、戦後日本の都市や社会を独自の視点から記録。サンフランシスコ近代美術館、メトロポリタン美術館、国立国際美術館、テート・モダン、東京都写真美術館など国内外で大規模な展覧会を開催している。2012年に国際写真センター生涯功労アワード、2018年にフランス政府芸術文化勲章、2019年にハッセルブラッド国際写真アワードを受賞している。
TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト 奈良女子大学 長谷研究室「複製される感性-森山大道」
| 会期 | 2026年9月5日から10月18日 |
| 時間 | 10:00〜18:00 |
| 会場 | 東京都写真美術館 地下1F展示室 |
| 観覧 | 無料 |
| URL | https://eng.nara-wu.ac.jp/tscp/ |

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