身体感覚をテーマとした企画展

NPO青山デザインフォーラム(ADF)は、「 Phygital World ―グーテンベルクの彼方へ― 」展をメタバースバーチャル美術館「COCO WARP」において、2023年9月1日から10月31日まで開催いたします。本展は、文明と共に変わりゆく私たちの身体感覚をテーマとした企画展です。

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本展は、現代社会における複雑なテクノロジーと私たちとの関係を俯瞰的に見つめ再構築することを目的としています。この展示では物質として感じられる「フィジカル」と実体として見えづらい「デジタル」双方の関係や相互に及ぼす影響について考察を促し、当たり前のものとしてとらえられている私たちの感じ方や考え方に焦点を当て、それがいかに変化していくかについて自覚的であることを提起します。

Phygitalとは、「フィジカル」と「デジタル」を掛け合わせた主にマーケティングの分野で用いられる造語です。フィジタルな体験は、特別なものではなく、所与としてすでにわれわれの生活に深く入り込んでいます。ECサイトでのショッピングやスタンプで会話するチャットアプリ、倍速での視聴、パンデミックを機に行われるようになったリモート会議はその最たる例でしょう。物理的要素とデジタル要素の両方を組み合わせた違和感すら伴う新しい体験は、瞬時に私たちの身体感覚を更新します。スピード感だけにとどまらず笑いや悲しみ、怒りといった私たちの感じ方にも多大なる影響を及ぼしています。私たちはいつから翌日に届かない荷物に苛立ちを覚えるようになったのでしょうか。メディア論の先駆であるマーシャル・マクルーハンは、その著書「グーテンベルクの銀河系」の中でテクノロジーは身体の技術的延長を可能とし、相互に影響を与えながら人間の知覚・精神を変容させてきた歴史を詳らかに語ります。活字から音声通話、メール、テレビと電子メディア乱立の果てに、動画はより短く速く加速度的に私たちを変容させ続けます。

メタバースをはじめとするWeb3や生成系AIが、社会に完全なインフラとして普及した世界において、私たちの感じ方はさらに今とは異なるものになっているはずです。生活様式のみならず、人生の意義や自由意志、知能についてもテクノロジーはカタストロフィックに私たちの存在に揺さぶりをかけます。生物工学やサイボーグ技術を駆使し、心身ともに人類が神にとって変わる”ホモデウス”への道は遠くない未来の話です。詩と音楽とワインに興じる暇を持て余した神々の饗宴なのか、それともラグナロクに見られる破滅の世界なのか。メタバースバーチャル美術館「COCO WARP」は、デジタルアート展で3030年の未来を体感することを大きなテーマにしております。3030年は今を生きる私たちひとりひとりの振る舞いと深く連動しています。

アートの可能性のひとつに、私たち自身が置かれた状況を静的に俯瞰的に見つめることがあげられます。本展のアーティストとその視座を共有することで、調和した持続可能性ある未来に向けたビジョンが、たとえそれが警句であったとしても、いくばかりか共有されることを祈ります。

本展では、新進気鋭のアーティストを5名厳選しました。デジタルとアナログが溶け合い、ひとつになるオブジェを巧みに附置し表象するビジュアルアーティストから見慣れた都市や風景を統合し洒脱な違和感で脳にダイレクトに異化効果をもたらすフォトグラファー、音楽やライブを一点もののアートとして作品化に挑戦するミュージシャン、ビッグデータと移ろいゆく生命を見事にデジタル作品に結実させる木版画家、変わりゆく身体を可愛らしいアバターで表現する奇抜なファッションデザイナーたち。フィジカルとデジタルの狭間を越境するアーティストたちのフレームにとらわれない瑞々しい感性は私たちの未来を考える一助となるはずです。3030年という途方もない未来の射程をとらえる彼らの想像力と、これから近い将来に世界へと旅立つ表現者たちの類稀なる創造性をぜひご堪能ください。

参加アーティスト

坂本拓也 / Takuya Sakamoto

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愛媛県出⾝。2020年、尾道市⽴⼤学⼤学院美術研究科を修了。以降、尾道市を拠点に作家活動を継続している。オイルペインティングを基盤としつつ、詩や⼩説、デジタル作品の制作など、流動的な表現領域で活動を展開。『「わたし」とは何であるか。』を主たるテーマに、「意識/歴史の連続性」や「記憶/記録における他者性」についての作品を制作している。

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坂本拓也《Lukas》

個展
2022年「存在の不⾃由」おのみち歴史博物館

主な展覧会
2022年 Setouchi Art Jack 2022, 南新町商店街、常磐町商店街、⽥町商店街および周辺(⾹川県)
2019年「上海アートフェア2019」日本新鋭アーティスト展(NECC/上海) 
2019年 Tropical Lab 13: Erase(ラサール芸術大学/シンガポール)
2019年 Future Artist Tokyo -EЯLection of Anonymous-、東京国際フォーラム ロビーギャラリー

URL: http://tkysakamoto.wp-x.jp/
Instagram: https://www.instagram.com/takuyasakamoto1996/

縣健司 / Kenji Agata

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フォトグラフィー界において、異化効果を駆使した斬新な表現を行う。見慣れた都市や風景を巧みに変容させることで、観者の認識と感受性を巧みに詩的に挑発する。縣のアプローチは徒歩という原始的な営みを起点とし、都市や自然の風景をありのままに記録し、場の霊性に敬意を込めつつ現在や過去、格差などといった人々の営みを両義的なままに統合する。彼のカメラを通した世界は、一瞬の洒脱な違和感として脳に衝撃を与え、現代社会の断片的な美学と都市の記憶の再構築を促す。

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縣健司《Landscape 2017-2021「東京タワー、上野」》

1991年 神奈川県生まれ
2016年 東京藝術大学美術研究科修士課程絵画専攻修了 現在 同大学美術学部デザイン科 平面・映像工房 テクニカルインストラクター

個展
2012年「BLASPOLOSION」(TENGAI GALLERY/中目黒)
2020年「-SCAPES」(TAKU SOMETANI GALLERY/浅草橋)
2021年「SCAPES+」(TAKU SOMETANI GALLERY/浅草橋)

グループ展
2016年「第64回 東京藝術大学 卒業・修了作品展」(東京都美術館・東京藝術大学/上野)
2019年「SENJU LAB 2015-2019 美術と音楽をアートする」(東京藝術大学 奏楽堂/上野)
2019年「上三原田の歌舞伎舞台創建200年祭」(上三原田の歌舞伎舞台/群馬県)
2022年「The Prize Show!~What`s藝大?」(藝大アートプラザ/上野)
2023年「WHAT CAFE EXHIBITION vol.24」(WHAT CAFE/品川)
2023年「阪急アートフェア」(阪急うめだギャラリー/大阪) 受賞歴 2015年 第10回 藝大アートプラザ大賞展 奨励賞受賞

Instagram: https://www.instagram.com/kenji_agata/

後藤望友 / Miyu Goto

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作曲家・ピアニスト。「音楽は一点物のARTになり得るか」という問いのもと、自作品を"RAW ARTS"と称し、音楽をARTのフレーム内で再定義。聴者の直感/本能に訴える音楽作品を創作し、自ら表現している。

東京芸術大学作曲科、東京芸術大学大学院作曲専攻を卒業。 卒業時に同大学よりアカンサス音楽賞を受賞。 吹奏楽連盟より吹奏楽賞受賞。TIAA全国作曲家コンクール審査員賞受賞。洗足現代音楽作曲コンクール第1位。

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後藤望友《On the Road to Coexistence》

作曲・演奏活動

  • GUCCI Garden Party
  • Cartier collection"Les Galaxies de Cartier"
  • DAKS / LEONARD collection (Takashimaya Osaka)
  • Rolls-Royce (Rolls-Royce Motor Cars Tokyo)
  • GINZA SIX X’mas event
  • Matsuya GINZA
  • Tokyo Big Sight Music Instruments Fair (YAMAHA)
  • TEZUKA OSAMU "The 90th Anniversary of the Birth Ceremony"

URL: http://www.miyu-goto.com
Instagram: https://www.instagram.com/goto_miyu/
Tumblr: https://miyugoto.tumblr.com/

mole^3 (molecubed)

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版画家・ビジュアルアーティスト。オープンデータ・画像・音などを使用した作品や、ジェネラティブアートを多数制作。コーディングの傍ら、フィジカルアートたる版画も制作する。デジタルとアナログを越境するしなやかな知性は数理的アプローチで対象に迫る。

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mole^3《Shinjuku》

コンピュータグラフィクスを用い、さまざまなアルゴリズムを駆使しながらクリエイティブ・コーディングを行う。同一の画像に差異を加えたアルゴリズムから自動生成される複数の画像は遺伝子が発現した生命のように千変万化する。鉄道、河川、国勢調査のデータ等の取得から生まれるアニメーションは単なるデータのビジュアライゼーションではなく、データ内に潜む波やゆらぎの絵画である。筑波大学芸術専門学群卒。武蔵野美術大学CI学科非常勤講師。

Linktree: https://linktr.ee/molecubed

MAHANA

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颯爽と子ども心のままに雅を宿す大和魂を彩豊かに現代に映しとる鬼才のデザイナー。縄文の古代の彫刻や歌舞伎の色彩鮮やかな装束からインスピレーションを得た彼のクリエーションは日本の文化的遺産を継承しています。表現の核心には、変化する人間の肉体をアバターとして可視化するという着想があり、時にそれは可愛らしい丸みのあるキャラクターへと昇華されます。彼のデザイン哲学は多種多様な存在をあるがままに受け入れるオープンマインドな公平性に依拠し、とりわけパッチワークは”みんなちがって、みんないい”ままの共存を具現化したものです。特徴的なフリンジ加工は自然の揺らぎや温かみを取り入れ、持続可能な素材と融合させ創作物が誕生します。

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MAHANA《NFT figure_MAX hoot dino》

2019年 東京インディペンデント
2019年「室戸自然の家」国立室戸青少年自然の家(高知)ライブペインティング
2019年 ACTアートアワードnovae 入選
2019年 第11回躍動する現代作家展入選
2019年 グループ展 東京藝術大学 藝祭
2020年 藝育展(東京・上野 アメ横センタービル)
2021年 肉展
2022年 二人展 TWO MAN EXHIBITION 2022 IGAS
2022年 smart factory zone Collaboration Collection 「舵」 100Sneakers100NewMakers
2023年 ”Journey”展 gallery iro see some scene

Brand Instagram: https://www.instagram.com/fairenough_official_
Design Instagram: https://www.instagram.com/mahana_fe_d/

「COCO WARP」第一回企画展概要

展示会名「 Phygital World ―グーテンベルクの彼方へ― 」
会期2023年9月1日〜10月31日まで(予定)
会場メタバースバーチャル美術館「COCO WARP」
URLhttps://www.cocowarp.com/

参考文献

  • ケヴィン・ケリー『テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?』服部桂訳、みすず書房、2014年
  • 清水亮『教養としての生成AI 』幻冬舎新書、2023年
  • 星新一『声の網』講談社、1970年
  • マーシャル・マクルーハン『グーテンベルクの銀河系―活字人間の形成』森常治訳、みすず書房、1986年
  • 水越伸『21世紀メディア論』放送大学教育振興会、2011年
  • ユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・デウス 上 テクノロジーとサピエンスの未来』柴田裕之訳、河出書房新社、2018年
  • 稲田豊史『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』光文社、2022年
  • アイザック・アシモフ著『ファウンデーションの彼方へ〈上〉―銀河帝国興亡史〈4〉』岡部宏之訳、早川書房、1996年

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