アートのメタバース進出

美術館で作品を鑑賞するという特別な体験に代わるものはないが、一方で本やインターネットでアートを見ることにも充分価値がある。しかし、美術館は数日または数カ月間閉館しなければならないことがあり、いずれにしても美術館という環境に適さない作品が何百万点とあるのに対し、メタバースには、さまざまな方法でアートを体験できる多くの選択肢がある。

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360° 3D immersion in the heart of the Abode of Chaos, Artmarket.com's head office, Copyright 1987-2022 thierry Ehrmann www.artprice.com - www.artmarket.com

メタバースが生み出すもの

Artmarket.comおよびArtprice部門の創設者兼CEOであるThierry Ehrmannは次のように述べる。「メタバースが生み出すのは、最高のもの... そして最も漠然としたものです。この新しい次元の片鱗は既に存在し、 驚異的な応用の可能性を示唆している。メタバースには現実世界の延長として機能するものもあれば、独自のルールで支配された新しい宇宙を創造するものもある。現在Facebook(Meta)とSandboxによる選択がニュースを賑わせているが、他にも多くのメタバースの形態が様々な分野で構築されつつあり、特にアートの世界やArtpriceの周辺で顕著だ」。

デジタル時代に突入して

この10年間で、バーチャルツアーはアートの世界でも選択肢の一つとして定着してきた。現在、多くの美術館や見本市、オークションハウスでは、スマートフォンやタブレット端末、パソコンで展示空間を散策するバーチャルツアーを提供している。

アートへのこの新たなアクセスは、アマチュア、プロフェッショナルを問わず非常に充実した内容の作品鑑賞を可能にし、柔軟なニーズを満たす展示会を発掘(または再発見)する補完的な方法となる。NFTに対する異常なまでの需要は、まさに現代のアート購入にとって柔軟性が重要であることを証明している。この電子証明書の交換を可能にするプラットフォームは、インターネットに接続できる環境であれば、昼夜を問わず地球上のどこからでもアクセス可能である。

バーチャル展示ツアーは、元々フォトモンタージュとして作成されたが、新しい技術では3Dデザインソフトウェアや人工知能が使用されるようになっている。Universal Art Museum(UMA)Genesis PenthouseSpatialなどが開発したソリューションにより、作品群を遠近法を駆使したデジタル空間にほぼ制限なく「吊るす」ことが可能になった。

ようこそ「Otherside」へ

NFTの領域で極めて重要なプロジェクトが多く行われていることは、それに対応するメタバースの到来が近いことを示唆している。これは、すでにYuga Labsが発売している「Otherdeed for Otherside」で実証されている。

展開するNFTコレクションのBAYC(Bored Ape Yacht Club )が名声の頂点にあり、権威あるコミュニティに支えられているNFTスタジオ「Yuga Labs」は、メタバースで初となるThe Othersideと呼ばれる仮想空間における土地の販売を実施した。ところが、BAYCプロジェクトに対する熱狂と、非常に魅力的なMint価格(305 APE、約6,000ドル)により購入が殺到し、イーサリアムのブロックチェーンで処理できる範囲を超えてしまった。いわゆる「ガス」代が高騰し、かなりの数の参加者が多額の料金を支払ったにもかかわらず、土地を取得できないという事態となったのだ。この結果、Yuga Labsは、ガス代を支払ってもOtherdeedを購入できなかった人にはガス代分のETHを補填する対応をとった。現在、土地の最低価格は2.55 ETH(約2,500ドル)で、前回公開オークションで売られたApeは340万ドルだった。

Murakami.Flowers

世界的な現代アーティスト 村上隆は、NFTプロジェクト「Murakami.Flowers」について、自身のプロジェクトの総和となるようなメタバースを構築したいと述べている。さらに、

「60歳という年齢は、一般的には人生の最終段階なのかもしれない。しかし先ほども言ったように、私の作品は私が死んだ後にそのメカニズムが動き始めるように設計されている。だから、ここは私にとってまさにスタートラインとなる。 

日本の霊峰・富士の裾野に桜が咲き誇るシーンを、デジタルの世界で再現したいと思った。M.F(ムラカミフラワーズ)と共に、私が得た様々な評価や私の仕事がデジタル世界で再構築されている未来の仮想空間を妄想して描いた」とも述べている。

村上のプロジェクトは漠然としているようにも映るが、他の多くのメタバースプロジェクトと同様に、魅力的な驚きをいくつも秘めていることは確かである。

Artmarket・Artpriceについて

美術品市場におけるグローバルプレイヤー、Artmarket。中心となるArtprice部門は782,000人以上のアーティストを網羅する3,000万以上のインデックスとオークション結果を含むデータバンクを所有しており、これまでと現在の美術品市場情報の蓄積、管理、活用の分野における世界的リーダーとなっている。Artprice by Artmarketは、美術品市場に関する情報を提供する世界的なリーダーであり、世界標準のマーケットプレイスを通じて、世界有数の美術品NFTプラットフォームになることを目指している。