リアルタイムで表情を変える屋外インスタレーション

モンタージュは、在日スイス大使館とスイス連邦工科大学チューリヒ グラマツィオ・コーラー研究室、東京大学 学系研究科建築学専攻 T_ADS 小渕祐介研究室が開催する「Kizuki-au 築き合う Collaborative Constractions」において、2つのデジタルファブリケーション建築を包む空間演出を担当した。

adf-web-magazine-kizuki-au-collaborative-constractions-1先端テクノロジーによって作られた二つの構造物と常滑市の歴史、風土を融合させ、新しい建築と歴史ある土地の感性との結び付きを示した屋外インスタレーションは、会場の敷地の境界に沿ってミストと照明と夏草で緩やかな「垣根」をつくり、敷地内の風力センサーで常滑の丘に吹く風をセンシングしてリアルタイムに空間の表情を変えていく。ミストによって温度を下げるだけでなく、日本古来の風鈴や花火のように五感で「涼を楽しむ」ことを意図している。adf-web-magazine-kizuki-au-collaborative-constractions-7

今回使用したPanasonicの二流体ノズルによる極微細なミスト「シルキーファインミスト」は、粒子径が細かいことで気化が速く近づいても濡れにくく、空間に漂いやすいという特徴を持っている。これにより、イタリアで行われたMirano Salone2018や東京ドームシティで開催されたイベント「かいじゅうのすみか」、ドバイ国際博覧会の日本館など、暑さ対策だけでなく演出装置としても多分野で活躍している。

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土管に仕込まれたスピーカー

敷地内に散りばめられたPanasonic社製のスピーカー16台と24台のLED照明、そして隣接する常滑焼の陶芸窯の煙突に設置された投光器は、風力センサーからの数値を元にDMX制御で連動しながらリアルタイムで変化していく。古常滑から着想した「空」「風」「火」「水」「地」というモチーフを色相環に当てはめた照明演出で常滑に吹く風を可視化し、常滑焼を作る際に発生するさまざまな音や、スイスの自然が奏でる環境音をサンプリングしたアンビエントな音響は、常滑焼の土管の中に仕込まれたスピーカーから独特な反響音となって空間に響く。これは江戸時代末期から土管と共に生きてきた町、常滑という場所だからこそ生まれた音響演出で、ミストと照明、夏草を残すことで作った敷地境界のゆるやかな「垣根」は、風の変化や時間の経過によって表情を変える。

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会場エントランスの東京大学パビリオン

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常滑の高台に建てられたETHパビリオン

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霧に包まれるETHパビリオン

このプロジェクトは、2018年にイタリアのミラノで行われたMilano Saloneで「シルキーファインミスト」と映像を組み合わせたPanasonic主催のインスタレーション「Air Inventions」を演出しベストテクノロジーアワードを受賞、そして2021年10月から2022年3月まで行われていたドバイ国際博覧会の日本館でも同じミストを使った空間演出を担当し、BIEアワード展示部門で金賞を受賞したチームが空間演出を担当。ミストと照明、音響を組み合わせた空間演出の経験とノウハウをいかしながら、濡れにくく漂いやすいという「シルキーファインミスト」の特性も考慮して構築した屋外インスタレーションとなっている。

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ゆるやかな「垣根」に囲われた会場

落合 正夫 / Masao Ochiai

落合 正夫は東京都出身の1980年生まれ。CGデザイナー、VFXディレクターを経て、プロモーション映像やインスタレーションの演出家として活動。ドバイ万博、ミラノデザインウィーク、モーターショウなど、国内外のプロジェクトに参加。

モンタージュ

1994年設立。国内外の大型イベント、アートインスタレーションを数多く手掛け、映像を基点とした空間演出、体験設計を行うクリエイティブスタジオ。PanasonicのシルキーファインミストとのコラボレーションではMilano Salone 2018 「Air Inventions」ベストテクノロジーアワード、ドバイ万博日本館展示演出においてはエキシビションデザイン金賞を受賞。土地や人の持つ歴史や背景、感性などを演出として昇華し、新たな体験を生み出し続けている。