イスラエルのホロン・デザインミュージアムにて、子ども向けのランドスケープインスタレーションの展示が開催
2か月に及んだロックダウンによる休業を経て、イスラエルのホロン・デザインミュージアムが再開した。当館のために特別に設置された、サリット・シャニ・ヘイによるランドスケープのインスタレーションを含む展示「Black Box」により再開の幕を開けた。展示期間は2021年6月5日までとなる。
子どもに優しいデザインを得意とするサリット・シャニ・ヘイのインスタレーションは、アザラシやアシカ、熊などが生活する海岸線の岩場を、クッション性のある塊で表現した、想像力に富んだランドスケープデザイン。2010年にロン・アラッドによるデザインで完成した当館は、赤とオレンジのストライプがカーブを描く、大胆なデザインの外観。それとは対照的に、涼しげな色合いで屋内のガラス越しにそびえる内壁。外壁と内壁のダイナミックな色彩の移行を、青と茶色がかった灰色のトーンのインスタレーションが繋ぎ合わせるような役割を果たしている。
サリット・シャニ・ヘイの作品は、高い建築技術を用いながら、遊び心のある心地の良い空間を完成させている。アーチがかった形状は、ひっそりとした海岸や絶壁をイメージさせ、野生動物がその周りに寄り添っている。自然光をふんだんに採り入れる設計の当ミュージアムでは、明るい朝日に照らされたときと、沈む夕日に照らされた時とで、空間の雰囲気やデザインの見え方が異なる。1日の中で様々な表情を見せるインスタレーションは、多くの建築学的な技術要素をクリアして実現している。
サリット・シャニ・ヘイは、作品を通して、野生動物と手つかずの景観の関係性を模索してきた。柔らかい素材を用いて、伝統的な手芸技術を取り入れながら、多様な技術を駆使し、ぬいぐるみやオブジェクトを作製してきた。子ども向けのデザインに特化したことで、柔らかいオブジェクトが子どもや大人との出会いによって育まれる相互関係に幾度となく触れてきた。
美術館の2階に設置されたインスタレーションは、アクリル樹脂やフォームを木製の造作物に詰め、ニュージーランド産のラムウールで覆っている。鉛筆で描かれた曲線のようなゆるやかなカーブを、伝統的な工芸技術を駆使した密な縫い目で表現。まるで彫刻のような曲線が際立っている。オーガニックな要素であるラムウールは、暖かみのある自然な風合いを演出すると同時に、耐久性に優れた丈夫な素材でもある。子どもの遊び場を想定して作られたインスタレーションであるが、新型コロナウイルス感染防止対策の規制の下、現在は利用が禁止されている。
当インスタレーションは、住居、自然、そしてパンデミックにおける避難もテーマにしている。
このプロジェクトに取り掛かったのは、美術館から提案をいただいた1年前。パンデミックの初期で、大きな不安を抱えていた頃でした。パンデミックを経験したことで、自然の中で過ごすことのセラピー効果について関心を持ち始めました。それは、特に子どもにとって重要であると感じ、瞑想できる隠れ家のような空間を作りたいという思いで作り上げました。
サリット・シャニ・ヘイ
当インスタレーションは、自身の「テルアビブ・クラフト」やエレツ・デザイン博物館での「デザイン・ビエンナーレ2020」などで展示された作品を進化させたもの。柔らかい素材で自然や動物をモチーフに表現した作品を数多く生み出しており、住宅や学校への大規模なプロジェクトにも取り組んでいる。
サリット・シャニ・ヘイ デザインスタジオ(Sarit Shani Hay Design Studio)について
教育環境分野のパイオニアであるサリット・シャニ・ヘイが率いる、テルアビブを拠点とするデザイン事務所。受賞歴があり、多才なシャニ・ヘイは、アートとデザインの融合により、幻想的なオブジェクトでダイナミックな空間を数多く生み出してきた。1995年の事務所設立以来、カスタムメイドの家具やアクセサリーなどで包括的なデザインを提供し続け、インテリア・家具デザイン事務所としてイスラエルで不動の地位を確立している。この10年間、革新的でセラピー効果のある教育環境を提供すべく、イスラエル国内の学校や病院など、子ども向けの公共スペースに特化してきた。その功績は、イスラエル国内のみならず国外メディアでも取り上げられ、2020年には、インクルーシブ教育の学校としてテルアビブで初めてFRAMEアワードの金賞を受賞するなど、国際的にも評価されている。同年、著書『Sarit Shani Hay: Creative Spaces for Children』を出版。