生物多様性や菌類ネットワーク、日本の伝統的な建築技術を取り入れたリジェネラティブ・デザインを評価
日本・屋久島を拠点とするリジェネラティブ建築設計事務所「tono」が、「アーキタイザー A+アワード2026」において「最優秀サステナビリティ設計事務所賞」を受賞した。今回の受賞は、単一のプロジェクトではなく、建築を通じた生態系の再生に取り組む同事務所の長期的な活動と理念が評価されたものである。
2016年に東京で設立され、2020年に屋久島へ拠点を移したtonoは、生物多様性や土壌の健全性、菌類ネットワーク、日本の伝統的な建築技術を現代の環境設計と融合させる独自の設計手法を発展させてきた。今回の受賞は、その設計思想と継続的な実践を評価するとともに、建築分野においてリジェネラティブ建築への関心が高まっていることを示している。
従来のサステナブル建築が環境負荷の低減を主な目的としてきたのに対し、リジェネラティブ建築は、生物多様性の回復や自然環境の再生など、環境に積極的な価値を生み出すことを目指す。tonoは、建築を単に建物をつくる行為ではなく、人と土地、生きた生態系との関係をデザインする営みと捉えている。
ユネスコ世界自然遺産に登録され、豊かな原生林と高い生物多様性で知られる屋久島への移転は、同事務所の設計思想を大きく方向付けた。現在では、生態系や水循環、土壌環境、生物多様性、長期的な環境保全を設計プロセスに組み込む独自の手法を確立している。
設計では、既存の生態系を維持することを重視し、大規模な造成を可能な限り避けるほか、焼杉杭や石場建てなど日本の伝統的な基礎工法を採用して土壌への影響を抑えている。また、地下に広がる菌類ネットワークや野生動物の移動経路、水循環、地域固有の自然環境なども、建築設計上の重要な要素として考慮される。
その代表例が住宅プロジェクト「Sumu Yakushima」である。環境負荷の少ない基礎工法や生物多様性に配慮した配置計画、生態系の回復を促す設計手法を組み合わせ、建築を通じて自然環境の健全性を高めることを目指している。tonoでは、この設計思想を、菌類や微生物、生態系ネットワークを設計のパートナーと位置付ける建築哲学「KINCHIKU(菌築)」として展開している。
今回の受賞は、美しさや造形だけでなく、建築が自然環境の再生にどのように貢献できるかという視点が建築界で重要視されつつあることを反映している。tonoは2022年以降、40件を超える国際的なデザイン賞を受賞しており、「Sumu Yakushima」も「iF Design Award Gold」や「DFA Design for Asia Awards Grand Award」など25件の国際賞を獲得している。一方、今回の「最優秀サステナビリティ設計事務所賞」は個別の作品ではなく、事務所全体の理念と継続的な活動を評価する賞として位置付けられる。
tonoは、日本の伝統的な建築技術と環境解析、LCA(ライフサイクルアセスメント)などの現代技術を組み合わせ、「Japanese Simplicity(日本的なシンプルさ)」という考え方のもと、土地や気候、生態系との調和から生まれる建築を追求している。現在は国内外でホテル、リゾート、住宅プロジェクトを手掛け、環境負荷の低減にとどまらず、生態学的価値を高める開発を目指すクライアントとの協働を進めている。
tono Inc.
建築家であり「KINCHIKU(菌築)」の提唱者でもある小野司が設立した、屋久島を拠点とするリジェネラティブ建築設計事務所。日本の伝統的な建築の知恵と最新の環境技術、そして生態学的なデザインの理念を融合し、生態系の健全性と人々のウェルビーイングの双方を高める建築を目指している。
2022年以降、tonoは40件を超える国際的なデザイン賞を受賞した。代表作「Sumu Yakushima」は25件の国際的な建築・デザイン賞を受賞し、リジェネラティブ建築を先導するプロジェクトとして国際的に高く評価されている。現在は、ホテルやリゾート、住宅開発を中心に国内外でプロジェクトを展開し、時間の経過とともにより豊かな生命力を育む場所づくりをクライアントとともに実践している。

日本語
English















