垂直型都市生活の新たなモデル
カナダ・バンクーバーの新たな複合開発「The Butterfly + First Baptist Church Complex」は、高密度住宅、アフォーダブル賃貸住宅、コミュニティサービス、歴史的建築の保存をひとつの都市敷地に統合したプロジェクト。Revery Architecture Inc.によるもので、地上57階、約605,000平方フィート(約56,200㎡)の規模を持ち、住宅タワー、7階建てのアフォーダブル賃貸住宅、そして1911年に完成したゴシック・リヴァイヴァル様式のファースト・バプテスト教会の修復・増築によって構成される。
(The Butterfly & First Baptist Church's presence within Vancouver's skyline
Video credit: David Kvocak / DroneCam Studio)
住宅、社会インフラ、歴史的建築、公共空間をそれぞれ独立した機能として扱うのではなく、ひとつの開発の中に重層的に組み込んだことが本プロジェクトの特徴。異なる背景や年齢、世帯構成を持つ人々が、コミュニティプログラムや共用アメニティとともに暮らせる環境を目指したものとなっている。
「The Butterfly」の設計で中心的な役割を担うのが自然だ。山、海、森林に囲まれたバンクーバーの環境に応答し、住宅タワーの垂直方向の暮らしに緑、自然光、新鮮な空気を取り込んだ。各住宅階には屋外のスカイガーデンを設け、従来の閉鎖型共用廊下に代わる自然換気された共用空間を形成している。落葉樹や豊富な植栽によって季節とともに変化する垂直型のランドスケープをつくりながら、都市上空に住民のための屋外空間と眺望を提供する。
スカイガーデンは、環境性能にも寄与する。自然換気、冷却、採光によって機械設備への依存を抑え、年間約400,000kWhのエネルギー削減を見込む。従来型の共用廊下を採用した場合と比較して、タワーのエネルギー使用量を10%以上削減するほか、最も暑い時期に室内温度が快適性の基準値を超える時間を65%削減できると予測されている。

Residential Pool Amenity with custom designed and prefabricated GFRC structural ribs
Photo credit: Ema Peter
自然とのつながりは地上にも広がる。ランドスケープを施した中庭、緑化屋根、水景、共用の屋外空間を設け、全長50mのラッププールも自然光と眺望を享受できるよう配置された。こうした空間が、ウェルビーイングと屋外環境とのつながりを重視する計画を支えている。
コミュニティも本プロジェクトを特徴づける重要な要素で、市場価格住宅とアフォーダブル住宅に、保育、カウンセリング、レクリエーション施設、カフェスペース、緊急シェルター支援、コミュニティの集会スペースなどを組み合わせた。アフォーダブル賃貸住宅には、共用屋上庭園、都市型農園、屋外キッチン、ランドスケープを施したプレイエリアなどを整備し、住民の日常的な交流を促している。2ベッドルーム以上の住戸が25%以上を占め、家族や高齢者など多様な世帯構成に対応する。
開発の中心に位置するファースト・バプテスト教会は、礼拝と地域支援の場としての歴史的役割を継承する。保存修復では、耐震補強、基礎工事、歴史的な窓や石積みの修復、バリアフリー化、設備の近代化などを実施。重要な内部空間も再生された。
過去の改修で2層に分割されていたPinder Hallは、当初の吹き抜け構成に復元された。歴史的な木造柱、梁、トラスを再び見せながら、コンサートや結婚式、文化イベント、地域の集会などに利用できる空間へと生まれ変わっている。歴史的な建築としての性格を保ちながら、現代的な用途にも対応できるようにした。
歴史的な教会と新しいタワーの関係性は、建築そのものにも表れている。「The Butterfly」の特徴的な面取りされた基部には、教会の鐘楼とスケールを呼応させる大きな開口部を設けた。光に満ちたギャラリアが両建築をつなぎ、過去と現在を物理的・視覚的に結びつけている。
公共空間の拡充も計画の一環で、ランドスケープを施した中庭や庭園によって、街路レベルに新たな交流の場が生まれた。再生された教会の中庭は、これまでアクセスできなかった空間から、ベンチ、植栽、カフェ、ユニバーサルアクセスを備えた開かれた公共の場へと生まれ変わり、自転車駐車場、カーシェアリング、シェアモビリティのプログラムも整備し、より持続可能な移動を支えている。
環境性能も複合施設全体に組み込まれている。LEED Goldを目標とし、運用時の炭素排出量を68%削減。敷地内の地域エネルギープラントから再生可能エネルギーを利用した場合には、最大85%の削減を見込む。エネルギー使用量は45%、上水使用量は50%、生活用水の使用量は35%の削減を目指している。
住宅、コミュニティインフラ、歴史的建築の再生、公共空間、気候への対応を一体化した「The Butterfly」は、都市の高密度化に対するより包括的なアプローチを提示する。単に「より高く建てる」のではなく、新たな開発と歴史の保存、私的な生活と公共の活動、建築とランドスケープが共存する、よりつながりのあるレジリエントなコミュニティをつくろうとしている。
Revery Architecture Inc.
建築、インテリアデザイン、都市・建築計画を手がける国際的な設計事務所。「Building Beyond Buildings(建物の先をつくる)」という理念、場所づくりへの情熱、そして建築をより広範なコミュニティの取り組みと結びつける姿勢を軸に、人々の交流を促し、五感に働きかけ、暮らしの質を高め、喜びをもたらす、創造的で環境に応答した空間の実現を目指している。

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