ドバイの港町に日本の美学を追求する寿司レストランがオープン
ジュメイラはドバイの海岸地区で、高級ホテルやビーチで知られる観光地である。古くから漁師の街として栄えていたジュメイラは、大規模な再生プロジェクトが行われ、2014年に漁業と観光業が共存する港町へと生まれ変わった。2014年からジュメイラの海岸沿いに店舗を構える、この地で有名な寿司レストラン「Origami Sushi」は、ブルジュハリファの隣に建つドバイモール内に、このたび新たな店舗をオープンした。新店舗のインテリアデザインを手掛けたのは、ドバイのVSHDデザイン。シンプルでミニマルなデザインは、日本の独特の美意識である「詫び寂び」の世界に没頭できる空間を提供する。
新しい「Origami Sushi」のインテリアデザインは、自然素材を使って有機的な形を表現し、シンプルでミニマルな日本の伝統と文化に敬意を表している。寺のような構造は、濃く深いテクスチャーの土で覆われ、グレーの色合いがマテリアルの素朴な風合いをより強調している。無骨な表面に現れる光と影の陰影が壁にアクセントをもたらし、ほの暗い照明によって古い地下の寿司バーの雰囲気が醸し出されている。マットな黒タイルと、ソファのドレープ、テクスチャーガラスのパーテーションが、レストランでの体験にオーセンティックで新鮮な味をプラスする。ミステリアスで好奇心をそそるデザインは、同時に気高く、高級感があり、調和がとれて心地よくもある。これら全てがコンテンポラリーなインテリアに優しく包まれ、日本の詫び寂びの精神に通じるような感覚を覚えるのである。
VSHDがこだわったのは、オンリーワンのダイニング体験を提供することだった。分厚くて四角い柱が6メートル連なる入口を抜けて店内に入ると、そこには外の喧騒から逃れた、静けさの漂う秘密の空間が広がる。

Transitional space between the Mall's corridor and the restaurant used as both a waiting area and a retail space. Photo credit: Oculis Project
有名なショッピングモールであるドバイモールは常に多くの客でにぎわっている。忙しいモールの中の立地にこのような静かな空間を構築するには、多くの困難があった。レストランの入口は、モールの通路とメインのダイニングスペースを隔てる移行スペースとして設置した。入店を待つ客が並ぶエリアには低いバーカウンターに向かってスツール並べ、反対側にあるチョコレート販売の店舗とは一線を画す空気感を出している。素材感のあるソリッドな外観は、濃いグレーの力強い土とガラスのブリックが道行く人々の目にとまり、店舗に惹き込まれることを狙っている。狭い入口は、店内に入る光の量をコントロールし、メインのダイニングエリアの地下風の薄暗さの演出に役立っている。
メインのダイニングエリアは、2階にわたってバラエティに富んだ配置に座席をアレンジしている。1階は、ビルトインの席が境界に沿って配置されることで、座席の空間が広がり、用途に応じて組み替えられる座席空間を広く設けることができている。2階には、明るく照らされた寿司バーがあり、寿司職人の手仕事を座席から眺めながら料理を待つことができる。素朴な黒のタイルで覆われた壁とビルトインの椅子が、ミニマルで謙虚な落ち着きのある空間を創り出し、まるで繭に覆われているかのような心地よさを提供する。素材や色、空間を構成する線形、全てがVSHDのデザインと調和することで、日本の美徳とモダンな高級感が共存する空間が実現したのである。
VSHDデザインについて
VSHDデザインは、2007年、インテリアアーキテクトのライナ・ハムドによってドバイに設立されたインテリアデザイン事務所。機能と品質を追求した独特のスタイルが評価され、数々の賞を受賞している。ドバイだけでなく、アブダビ、カイロ、ロンドン、アマン、フロリダなどグローバルに事業を展開。国際的な経験値と優秀な人材を活かして、クライアントの意向に沿った、時代に左右されない、最先端の空間を創出している。