分割されたボリュームをレイヤー状に組み合わせ、プライバシーを保ちながら開放感を確保。中庭や動線、屋外空間を介して、暮らしと光、ランドスケープ、自然換気をつなぐ住宅
インドネシアのジャワ島西部・バンテン州、南タンゲランのBSD地区にある住宅街にある「Split Mass Residence」は、角地という敷地条件を活かし、「動くこと」を軸に住空間を構成している。K-Thengono Design Studioによるプロジェクトで、開放性とプライバシーのバランスを図りながら、複数のボリュームを組み合わせ、切り取られた眺望や屋外空間が連続し、自然光と自然換気を住宅の奥まで導いている。
角地を単に外部にさらされた敷地の端として扱うのではなく、複数の眺望や中庭を連続させるための構成要素として捉えた点が特徴となっている。1階には、敷地の前面と側面の境界に沿ってL字型の公共的なボリュームを配置。その内側に敷地奥の静かな屋外スペースを囲い込み、視線を引き込む焦点とするとともに、街路から住宅のプライベートな領域へと段階的に移行する構成をつくり出している。
プライベートな機能は、その上に設けられた大きなボリュームに集約された。この上層部は分割し、位置をずらすことで、異なるレベルの空間に動的な関係を生み出している。建物前面ではボリュームを地上へ向かって下げ、2つの階をつなぐ垂直方向の接続を形成。一方、背面ではボリュームを空へ向かって持ち上げ、屋外空間の連続性を伸ばしながら、住宅を外部環境へと開いている。
2階では、特に「動くこと」が空間体験の中心となる。動線スペースは映画上映のための屋内シアターとしても機能し、そこから屋上のスイミングプールへとつながる。さらにプールからは、最上階の屋外ヨガスペースへと動線が続く。建物の頂部には全面的に植栽を施したグリーンルーフを設け、垂直方向に展開する住宅に、もう一層のランドスケープを加えている。
こうした連続する動線によって、移動は単なる機能的な手段ではなく、建築体験の一部となっている。住宅内を移動することで視界が変化し、内部と外部の関係も次々と切り替わる。異なるレベルをつなぐ複数のループによって、住む人はひとつの固定された視点からではなく、動きながら建築を体験することができる。
環境性能も、この空間構成と一体的に考えられている。レイヤー状に重なるボリュームによって自然換気を促し、自然光を住宅のより深い場所まで取り込む。建物を取り囲む動線部分には、リサイクルPET製のラタンによる可動式の編みパネルを設置した。パネルは日射を柔らかく遮りながらプライバシーを確保し、風を通す役割を果たす。また、可動式とすることで、時間帯によって変化する環境条件にも対応できる。
素材と形態もまた、敷地との関係を強調している。丸みを帯びた角部は、角地の形状に応答するとともに、異なるボリューム間のつながりを滑らかにする。1階には竹の質感を表現したコンクリートを用い、建物の基壇部に触感的な表情を与えている。
分割されたマッシングと動線を軸としたプランニングによって、「Split Mass Residence」では、動くことそのものが暮らしを特徴づける要素となっている。複数のレベルを通して建築とランドスケープ、自然光、自然換気を結びつけ、住宅内を移動する行為を、それ自体がひとつの建築体験へと変えている。
- Photo credit: Finbarr Fallon
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K-Thengono Design Studio
敷地や地域の文脈、そしてクライアントのニーズに深く応答する姿勢を設計理念の中心におくスタジオ。綿密な理解と徹底した探求を通じて、経済的・環境的・社会的課題に応える革新的なソリューションの創出を目指している。また、自然光や水へのアクセス、十分な通風を慎重に取り入れることで、人々のウェルビーイングを高め、住まい手と周囲の環境とのつながりを強化する空間づくりを重視している。設計プロセスでは、歴史的背景の分析とクライアントから得られる知見を統合し、文化的アイデンティティを反映しながらも、現代にふさわしいプロジェクトを実現している。

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