X+Livingのデザインによる多機能空間「Powerlong Ideas Lab」

上海にあるPowerlong Ideas Labは、従業員とユーザー、両方が利用するために作られた多機能空間である。デザインを手掛けたX+Livingは、クリエイターとユーザーとの間に双方向の交流が生まれることで、学びの場により多くの情報が提供/共有され、テクノロジーの発展に繋がることを目指し、この空間をデザインした。産業革命に続く歴史的な時代であるニューメディア時代を生きる我々に、隠れたビジネス価値を見出す機会を与えるような場となるだろうか。

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Photo credit: SFAP

革命のシンボルを表すピンクのパワータンクとパイプ

18世紀半ばに西洋諸国から始まった産業革命時代は、新エネルギーを採用した蒸気エンジンによって、その幕を開けた。石油タンクやスチールパイプはこの黄金期のシンボルとなり、資本主義システムの誕生にも貢献することとなった。

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Photo credit: SFAP

そして20世紀半ばからは、産業革命によって確立された伝統的な産業から、情報技術に基づく経済へと世の中が移行し、我々の人間性や産業の在り方などの物理的な側面の変化に影響を及ぼしている。

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Photo credit: SFAP

突如出現したコンピューターの人気が続く21世紀のニューメディア時代は、目に見えない「情報」が主役であり、象徴的なシンボルが存在しない。そこでX+Livingは、一昔前の革命時代に共通項を見出し、その時代の要素を取り入れることにした。共通項とは、どちらの時代も反骨精神をベースとした研究をもとに開発された技術がキーファクターであったこと、そしてどちらも経済発展に大きく寄与したこと、などが挙げられる。

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Photo credit: SFAP

空間全体を形作るのは、蒸気時代の工場を原型にした、最低限のパーツ(リアクションタンク、エネルギー供給パイプ、そして従業員用の通路)である。

リアクションタンクを活用したデザイン

X+Livingは、まず2階建てだった空間から柱を取り除き、9メートルの高さのひとつの空間にしてリスタートした。そしてミニマルなアプローチで、リアクションタンクを使った新たな空間デザインを編み出した。リアクションタンクによって作られた様々な空間に身を投じることで、利用者は多様な体験をすることができる。フロアを支える新たな柱は、4から5メートルのもので、この柱の間を縫うようにリアクションタンクが構築されている。これらが2階のR&Dスタッフらの仕事場や移動のプラットフォームとなり、1階にはユーザーが、新技術や情報化を活用した商品を楽しむための空間が用意されている。それぞれの層で行われている活動がひとつの空間で共存し、一体感をもたらしている。

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エネルギー供給パイプは、配線や空調ケーブルを隠すために用いられ、シンプルな剥き出しのインダストリアルデザインを実現している。既存の剥き出しのユーティリティパイプは、装飾のためにデザインされたエネルギー供給パイプによって綺麗に隠されている。むき出しだった1階の他の配管は、チューブ型のテーブルや椅子など周りの什器に融合する形で新たなデザイン要素として空間に組み込まれている。

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Photo credit: SFAP

このデザインが目指すところは、ニューメディア時代における革命精神を表現することだった。最後に、シンプルでクールなコンクリートで覆うことで、簡素で洗練された空間が完成している。そして、あらゆる形状の線が多方向に交わる空間で、スタッフとユーザーが同じ美学を共有し、交流を図ることが可能となるのである。

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X+Living について

 X+LIVINGは、2011年、中国人建築家のLi Xiangによって設立された建築デザイン事務所。商業施設、オフィス、宿泊施設、養護施設、モールなど、多方面をカバーする受賞歴のある会社である。エッシャーの連動パターンを彷彿とさせるデザインと、没入体験を提供する空間づくりで専門機関やメディアにより広く世界に知られている。Li Xiangの建築学のバックグラウンドをベースに、全てのプロジェクトにおいて、境界のない考えとユニークな戦略を駆使して、夢の中のようなドラマチックな空間を創り上げ、それぞれが語る物語で見る者を楽しませてくれる。