バージニア州立大学による低炭素なデザインと建築手法を採り入れた展望台

バージニア州立大学の学生と教授により建設された新たな展望台は、最先端の木材研究や革新的な工場組立てを採用したプロジェクト。アメリカ バージニア州のラドフォードに建設された本プロジェクトは、デザインや建設において低炭素を意識したアプローチを行った、大学内の多分野をまたぐ共同研究の成果でもある。

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Photo credit: Kay Edge and Edward Becker

プロジェクト概要

本プロジェクトのきっかけは、2018年にバージニア州のラドフォード市が、近隣のバージニア州立工科大学に新たなリバー鉄道のための展望台構想への参加を依頼したことに始まる。新たな展望台は、隣接するニュー川と歴史的価値のある鉄道橋への眺望が提供できる公共施設となることを目的としており、クリーンテックや低炭素建材を採用することで、工業的な街の過去のイメージから脱することを最大の目標としていた。学際的な教授陣と学生達のチームにより、2年の歳月をかけて研究とデザインが進められ、長さ約23メートル、高さ約9メートルの公共施設が完成した。プロジェクト序盤のデザインの段階で、学生たちはクロス・ラミネイティド・ティンバー(CLT)工法の耐久性、サステナビリティ、独特の空間的性質に注目した。しかし、プロジェクトが進行するにつれ、CLTパネルの運送にかかるカーボンコストが高いことが判明した。そこで、炭素排出の削減と地域貢献を意識した解決策として、地元産の素材の調達に切り替えた。

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Photo credit: Kay Edge and Edward Becker

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Photo credit: Kay Edge and Edward Becker

低炭素な商品開発

大学内の多学部にまたがる研究の成果として、現地で調達できる黄色いポプラ材を用いた特注の硬材クロスラミネートティンバー(HCLT)が開発された。素材となった木材は、建設現場から半径320キロ以内の場所から調達できた。このポプラ材は、硬材が優勢な森林において供給過多にあった低品質の木材。この木材を、アメリカの市場に出回っている軟木のCLTよりも高性能の特注HCLTにアップサイクルしたのである。研究所でサンプルのスケールから始まり、最終的には1.5メートル×3メートルほどの高強度のパネルへと進化させた。HCLTの基準そのものが底上げされたことにより、約7.6センチ厚の片持ち梁を構造に組み込むなど、プロジェクトの建築的要素に特徴を加えることが可能となったのである。アメリカでは、CLTの生産はAPA/PRG-320という基準に則って管理されている。この基準では、軟材の使用のみを許可している。よって、研究チームは、構造的なパフォーマンス、湿気性能、さらには紫外線、菌、害虫被害などへの耐性に関するデータを集め、この特注商品の性能が基準を満たすことを証明した。これは、このプロジェクトの学際的な側面が最も強調されたプロセスであった。

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Photo credit: Kay Edge and Edward Becker

モジュール建設

ニュー川沿いの傾斜の急な、かつての工業用地に設定された建設現場では、部材加工を行うのは困難だったため、別の整った環境で部品の加工や組み立てを行う必要があった。プロジェクトの外形は、ふたつのHCLTの箱が通路を挟んで設置されている。通路は、道路と同じ高さから始まり、川に向かう斜面の勾配によって最終的には6メートルほどの高さのカンチレバー構造となる。建設中には、構造の下に南北戦争時代の遺跡が発見されるなど、現場のロジスティクスがかなり複雑だったため、約3メートル×4.5メートルのHCLTモジュールは工場で組み立てられ、周囲の木々から15センチほどの許容範囲を維持しながらクレーンで慎重に設置された。

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Photo credit: Kay Edge and Edward Becker

この新しい展望台は、恒久的な建物にHCLTモジュラー工法を採り入れた世界初のプロジェクトである。それに加え、建設中にカンチレバー構造や給水系統システムに異常が起きない為の配慮が行われた点も特筆すべきポイントだ。また、このプロジェクトは、堅木の構造がむき出しな建物の例として、世界的に見ても特異である。ねじ穴には液体ワックスをしみこませ、外壁を亜麻仁油と天然の松ヤニでコーティングし、紫外線や熱、湿気のダメージから守る工夫も施している。

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Photo credit: Kay Edge

このプロジェクトは、HCLTを用いた恒久建築としてアメリカで初めて許可された例である。これは、価値の低いローカル素材のアップサイクル活用のさきがけとなり、同時に、研究をベースに推進された低炭素でサステナブルな建築のベンチマークを設定したとも言えるだろう。

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Photo credit: Kay Edge and Edward Becker

バージニア州立大学について

州立の研究施設を備えた大学で、36,000人の学生を抱える巨大な教育機関である。研究に与えられた年間予算は5億3100万米ドル。建築の学部課程は、米国内のデザインプログラムの中でも毎年首位を争うレベル。


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