世界のアワードで多数受賞
オーストラリア・ブリスベンでKoichi Takada Architectsが手がけた33階建ての集合住宅「アッパー・ハウス」は2024年の世界的な建築アワードの多くで受賞したプロジェクト。本建築の意識的な自然素材の導入、生物多様性のある植栽、人と地球への敬意、そしてその美しいフォルムが高く評価された。
モートン・ベイ・イチジクの木を参考にした表現力豊かなこの建築は188戸の住居を有し、ファサードにある5階建てのアート作品は世界最古の現生文明として知られるオーストラリアの先住民族についてのメッセージを擁している。
本プロジェクトはアリア・プロパティ・グループとKoichi Takada Architectsの初のコラボレーションにより完成した。ブリスベンの美しい自然、リラックスした都市生活、温暖な亜熱帯気候を称える建築で、1,000m²の先進的なウェルビーイング施設を備え、居住者同士を結び付ける役割を担っている。
特徴的なデザイン
ファサードと天然木パーゴラの建築的な 「根 」によって容易に識別できるアッパー・ハウスのフォルムは、モートン・ベイ・イチジク(Ficus macrophylla)のバットレス根を参考にしている。建物を象る曲線美は、土地の歴史からインスパイアされたファサードのアート作品と調和する。ワアニ族の著名なアーティストであるジュディ・ワトソンの作品「Bloodlines Weaving String and Water」(2023年)は、先住民族の歴史と伝統的な物語を浮かび上がらせるために、パンチングメタルを折り曲げ、バックライトで照らし出して表現されている。先住民の歴史を表現し敬意を表すことで居住者の間に包摂感を育み、オーストラリアの重要な過去についての対話のきっかけとなる。
ホリスティック・ウェルネス&ウェルビーイング
アッパー・ハウスでは、多忙な都市生活を営む居住者のウェルビーイングのために休息できる空間を提供している。ウェルビーイングのための自然の重要性を強く強調し、ホリスティック・ウェルネスに焦点を当てている。施設にはインフィニティ・プール、スパ、サウナ、フィットネス・クラブ、ヨガ・スタジオがあり、成熟したトロピカル・ランドスケープの中、役員会議室、在宅勤務施設、ラウンジ・バー、映画館、予約可能なプライベート・ダイニング、敷地内でイベントを開催するためのコレクティブ・ワインセラーなどがある。
持続可能性、生物多様性、最適化
アッパーハウスの全てのアパートメントには屋外バルコニースペースがあり、プライバシーを確保したり、東西の景観を楽しめるよう戦略的に配置されている。バルコニーの出っ張りは、自然光と日陰のバランスも考慮し、亜熱帯の気候の中で非常に質の高い生活を送ることができる。以下のような工夫も施されている:
- 5つ星グリーンスター評価(オーストラリアグリーンビルディング協会)
- 40kLの雨水タンクですべての植物を灌漑
- 30kWソーラーシステム
- 広大な造園が断熱効果をもたらし、ヒートアイランド現象を軽減
- 水使用量を20%削減した設計
- 建設にサステイナブル建材を使用(第三者検証済み)
- ビルの電力消費には100%再生可能エネルギーを調達
- 242の自転車スペースと60の電気自動車充電スペース
- NatHERSエネルギー評価スキームで★8.4を獲得
そのほか、その土地の気候に適した3,544本の植栽(在来種と熱帯種の組み合わせ)を厳選、屋上に活力を与え持続可能性への大きなコミットメントを示す、弾力性のある景観とミニ生態系も確保。樹木や葉の層は天然の断熱材として機能し、人工的な冷暖房への依存を減らす。40kLの雨水タンクで雨水を利用し、すべての植栽に灌漑を提供している。このように高密度な居住では土地の利用を最適化し、資源の有効利用が促進される。電気自動車によるカーシェアリングを実践し、建物には電気自動車の充電ステーションが設置されている。
Koichi Takada Architects
高田浩一は都市環境に自然を取り戻すことを目指す新世代の建築家で、2021年に出版された『高田浩一: 建築、自然、デザイン』では、高田のこれまでのキャリアを概説し、彼の先見の明と自然にインスパイアされた建築を詳しく紹介するとともに、人類の未来を意識的に形作る次世代の建築家を奨励するという高田の使命が綴られている。