21世紀の課題に取り組むミシュランの改革を象徴するレセプションエリア
19世紀末の創業以来、クレルモンフェランのカルメの地に植えられたミシュランのキャノピーは、2000年代に入ってから本社としての地位を獲得した。2021年に引き渡されたこのプロジェクトは、アンコール・ウルー・アーキテクツ、コンストゥルアー、ベースが共同で実施し、広場の象徴的な場所に位置しながら、グループのイメージを歓迎し、ユニークでまとまりのある空間として具現化することを目的としている。
本社ビルの革新的なレセプションエリアは、21世紀の課題に正面から取り組むミシュランの改革を象徴し、環境への考慮、そして循環型経済の観点から設計とオペレーションが考案された。
新しいアイデンティティ
ミシュランの「過去を消すことなく、新しく生まれ変わる」という希望に応えるため、このプロジェクトでは、現本社を2階建てに拡張することにこだわった。この増築部には歴史的な構造を生かしたエネルギッシュな新しいファサードが用意され、現在の建物をつなぐと同時にレセプションエリアとグループのメインエントランスを具現化したものである。
多面的かつ独創的なプログラム
このプロジェクトが取り組んだ主な課題は、毎日何千人もの訪問者を迎えることを想定して空間同士を一貫してつなげることだった。2000年代初頭、エドゥアール・ミシュランが広場に設置した熱帯ガラス温室は、将来が不透明だったため建築計画の中で保存されたままになり、今回の改築にあたり、来場者に公開されることになった。ガラス温室にはロゴが描かれ、ミシュランの価値観である街や世界に対する透明性、開放性を象徴している。カルム広場の端まで続く並木道には家具や緑が置かれ、夏には水のディスプレイを設置して爽やかさを演出する。カルムの敷地はこれまでミシュランの従業員しか入れなかったが、現在は一般公開されている。
多目的な展示スペース、ショップ、ガラス温室ミュージアム、そして心地よいカフェ・エクアトールがある。作業スペースは、新しい仕事やより協力的な作業方法に対応し、建築プログラムの順序はパブリックエリアから会社のプライベートスペースへ訪問者を導くように進化している。
現代的な課題に根ざしたデザイン
キャノピーは単なるレセプションビルではない。その構造は透明性と近接性、そして低カーボンフットプリントという2つの主要な課題に対応し、透明性は全長160mの巨大なガラスのファサードに象徴され、木製のオーニングが日差しを遮り、新本社にユニークなアイデンティティを与えている。また、建築のデザインや家具にはミシュランのタイヤをイメージした曲線が多用されている。
セメントの使用量を極限まで抑え、サステナブルな材料、再利用された材料、地元の材料を使用。特に地元にこだわったため、建設に携わった企業の多くが地元企業である。構造体にスチールを使用したり、グリッドやフレームを見えるようにするなど、敷地の産業的性格を損なうことなくシンプルな構成原則を実現するために地域の素材を使用することが共通の目標であった。
アンコール・ウルー・アーキテクツについて
アンコール・ウルーは2001年以来、ジェネラリスト・アーキテクチャーという概念を探求し、空間、社会、都市の問題をさまざまなレベルで操作し、そのプロジェクトを機転の利いた効率で貫いている。公共、民間、非営利のクライアントのために、使用と快適性の問題が基本的な関心事である文化的で革新的な施設を提供。プロジェクトには既存の建物の回復や再利用材料の使用に対する配慮が含まれており、一方で、プログラムされていない空間や機能を通じて居住者のアプロプリエーションを優先している。2018年アンコール・ウルーは、第16回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の一環として、フランス館から意外性と共通の願望を体現する空間の目録「Infinite Places」展の依頼を受けた。