照明を効果的に活用
ルメイ建築・設計事務所と照明代理店のルミ・グループが管理・物流部門を一箇所に集め迅速な意思決定を実現するオフィスの設置を目的に、カナダのモントリオール・オリンピック公園の一部セクターを明るく、あたたかでダイナミックな職場環境に改修した。
オフィスは遊歩道から数メートル後退した場所にあり、窓が多いにもかかわらず自然光が入らず、天井の高さも活かされていなかった。その一方で、通りから直接見える景色は興味深く、既存の建築物もユニークだった。本プロジェクトの建築家はこれら既存の資産を活かすため、内部と外部を有機的につなげカーテンウォールと建物内部をつなぐスポーク構造をレイアウトの基本とし、照明を活用することを決めた。
あるエリアから別のエリアへ
レセプション・エリアにはガラス張りの会議室、コートルーム、スクリーンなどがある。必要に応じて白く塗られたガラスの壁の一部をイベントや会議の際に黒板として使うこともできる。元々あったコンクリート床は修復され、磨き直された。壁の一部に施された木製の小割り板が温かみのある空間を演出している。1976年のモントリオール・オリンピックを控え、ポール・ブールヴァがアートペックスのためにデザインしたロータス・チェアも展示されている。張り出した埋め込み式と吊り下げ式の照明は、スピードと動きを連想させる。
メインスペースはゾーンに分けられ、それぞれに金融・法律サービス、人事、建設などの活動部門があり、オリンピックのリングに対応するパークのブランドイメージの色が割り当てられている。これらのエリア間の通路は、床、壁、天井がすべて塗装され、同系色で明度差をつけたLEDライトストリップで照らされている。新しいエリアに入ると、そのカラフルなエントランスからエネルギーを感じることができる。ゾーン内に入ると集中できるニュートラルさを取り戻す。色彩の変化により次から次へとユーザーに移動を促す演出となっている。
カーテンウォールに沿ったスペースは開放的で、コラボレーションやチームワーク、インタラクティブな活動が想定された。窓から遠ざかれば遠ざかるほど、エリアはより親密で居心地のよいものになり、クローズドスペース、アコースティックブース、セミクローズドなコラボレーションコーナーなどが設置された。よりプライベートなワークスペースであっても可能な限り空間をオープンにしたいというクライアントの要望があったため、適切な音響処理を施す必要があり、高い位置に細長いフェルトを設置しそこにシェルフ照明を組み込むことにした。カフェテリアでは、同じ照明器具を反射率の高い白いストレッチ・キャンバスの天井に組み込む必要があり、これも大きな課題だった。
強烈な個性を放つ照明
本プロジェクトの基本的なアイデアのひとつとして、オリンピック公園の人々の情熱的な活動を地域社会に発信する点が挙げられた。呼応するように敷地自体にもスポーク構造が採用され、ルミグループの協力を得て存在感のある照明器具がデザインされた。建物の内部から始まりカーテンウォールまで一直線に伸びるメインエリアの新しい照明器具は、既存の有機的な構造と融合し、そのラインとフォルムを強調・補強している。外から見ると、光のラインが通行人の目をとらえ、視線を内側に引き込むよう。
予算の制約を守りながら建築家のビジョンを実現するためには、革新的な解決策を考え出す必要があった。例えば、再利用可能な古い照明器具はすべて、視界に入りにくい閉鎖的なスペースに統合し、コストと廃棄物を削減。より賑やかなオープンスペースをさらに拡張できるようにした。既存の器具を改造して「多かれ少なかれオーダーメイド」のバージョンを作るようメーカーを説得し、ルミ・グループのチームはこの難題をクリアすることができた。
ルメイ建築・設計事務所
1957年設立。400人を超える建築家、デザイナーを擁し、自らの環境と世界中のコミュニティにおけるイノベーションを促進するため努力を続けている。ルメイは、人間の経験をその関心の中心に置くことで、制約を活用し、誰もが活躍できる空間を創造することを目指している。
ルミ・グループ
1995年に設立されたルミグループは、カナダ・ケベック州最大の照明代理店。エンドユーザーを刺激し、やる気を起こさせるために、空間の機能性と人間工学を創造的に変えることを使命としている。