ORG Permanent Modernityによる海洋多機能ランドスケープインフラのプロジェクトがArchitizer「A+アワード」の審査員賞に輝く
総合的なアプローチで建築デザインを手掛けるORG Permanent Modernityのプロジェクト「THE DESIGN FOR PUBLIC VALUE」が、Architizerが主催するA+アワード2022で審査員賞を受賞した。海洋ランドスケープのインフラに関する本プロジェクトは、今日の環境危機に対する総合的な回答であり、具体的な解決策を提示するものである。
Architizerが主催するA+アワードは、国際的に名高い建築アワードのひとつであり、毎年、世界中から優れた建築デザインが集結する。今回、「THE DESIGN FOR PUBLIC VALUE」が受賞したのは、未建築ランドスケープ部門の審査員賞で、80カ国以上から集まった作品の中から選ばれた。世界を代表する建築家やデザイナー、発言力のある有識者や技術者、ビジネスリーダーなどが審査する本アワードで評価されたのは、非常に意義深いことである。本プロジェクトは、他の受賞作品とともに、Architizerより出版される『The World's Best Architeture 2022』に掲載される。
プロジェクト概要
本プロジェクトは、ORGが行っている、海洋ランドスケープにおける多機能インフラに関する研究を元に提案された。本研究は、今地球が直面している、社会・環境・エネルギー・気候問題の打開を目指した、総合的なアプローチである。具体的には、海岸を守るための人工礁、生態系の復元や生物多様性の保全を助ける砂州の養殖の保護などが挙げられる。更に、風力、波力、太陽光などの再生エネルギーの生産には、ブルーエナジーバッテリー、水素や二酸化炭素の貯蔵システム、データセンター、淡水化システム、研究設備、モニタリング設備などのインフラが必要となる。これらを統合したランドスケープの実現には、経済的かつ技術的な問題だけでなく、社会的な支持が得られにくいことと空間統合の問題が立ちはだかる。よって、本プロジェクトでは、支持派と反対派がプロジェクトデザインの初期段階からかかわることで、共創の側面を持つことを重要視している。その結果、研究チームが編み出したのは、世界中の海洋ランドスケープインフラを構築する際に活用できる、汎用性のあるツールボックスである。
プロジェクトは、水循環プロセスと地形変化プロセスの相互関係を解明する水文地形学に基づいて、島の形状や機能的な側面の決定を行っている。各機能が設置される場所(例えばどの潮間帯か)などは、水文地形学によって算出される最適な空間前提条件のもとに決定される。そして、細かな区分けは、空間の最適化と多機能化の発想から、各機能が最大限に発揮できる法則で行われる。
一見シンプルな島/ランドスケープだが、様々なインフラが調和した複雑なシステムで構築された本プロジェクトは、未来のクリーンエネルギーや豊かなエコロジカルシステムを創出する源となっている。これらを実現可能にするのは、共創による徹底した研究と信頼性のある実装技術である。
ORG Permanent Modernityについて
ORGは、ブリュッセルとニューヨークを拠点に、研究とデザイン戦略を行う建築デザイン事務所。建築家、エンジニア、都市計画者、生態学者、経済学者、政策およびプロセス設計者が協力し、包括的なアプローチを行う。建築、都市計画、システムの3部門から成る専門家集団がそれぞれの知識と技術を結集して、空間、システム、戦略を融合させたあらゆるスケールのプロジェクトに取組んでいる。