イノベーションと成長を促す未来の社屋

オーレ・シェーレン設計事務所が、中国深センにあるIT企業 テンセント社グローバル本社建設の国際コンペで、技術革新と建築的ビジョンを融合させた象徴的なデザインをもったビジョン「Tencent Helix(テンセント・ヘリックス)」で勝ち抜いた。

adf-web-magazine-ole-scheeren-tencent-competition-1

Tencent Helix by Ole Scheeren © Buro OS_01_Night_View

adf-web-magazine-ole-scheeren-tencent-competition-2

Tencent Helix by Ole Scheeren © Buro OS_02_Aerial_view_lowres.

世界有数の株式公開企業である大手多国籍企業テンセントは「中国のシリコンバレー」とも称される深センの新グローバル本社に野心的なブリーフを提示した。13億人以上のユーザーを持つスーパーアプリ「WeChat」で世界的に知られるテンセントの新本社はマンハッタンのミッドタウンに匹敵する規模と形状を持つ新しい都市開発の一部となる。

有名な銭海湾に14ヘクタールの敷地を持つオーレ・シェーレンのテンセント・ヘリックスは未来のテクノロジーと金融の中心地で象徴的なセンターピースとして位置付けられた。テンセント・ヘリックスは一つのまとまりとして、また異なる要素の集合体として立つように設計されており、未来に向け拡大するテンセントのエコシステムの世界的な中心地となる。約50万平方メートルのキャンパスは、カリフォルニア州にあるアップル本社のApple Parkの約2倍の広さ。

北京のCCTV本部を手がけた建築家であるオーレ・シェーレンは、ヘルツォーク&ド・ムーロン、ヘザーウィック・スタジオ、ビャルケ・インゲルス・グループ、スノヘッタ、OMA、隈研吾、ザハ・ハディド・アーキテクツ、フォスター+パートナーズなどが参加した国際競争入札を経て、テンセントの新オフィスを設計することになった。

adf-web-magazine-ole-scheeren-tencent-competition-3

Tencent Helix by Ole Scheeren © Buro OS_03_Skyline

adf-web-magazine-ole-scheeren-tencent-competition-4

Tencent Helix by Ole Scheeren © Buro OS_04_Lake_View

テンセントは、社会にとって持続可能な価値をもたらす多次元的なシステムとして、テクノロジーの役割についてビジョンを持っています。私たちの新本社のデザインは、同じ価値観を反映したもので、空間と社会的統合の多次元的な構成において、テクノロジーと人々や社会のニーズを融合させています。

オーレ・シェーレン

都市との融合

この計画はダチャン湾島の広大な未来型地区の中心部分を成しており、深センの既存のマスタープランにおいて都市パズルの最後のピースとしての役割を担っている。渦を巻くような構造が4つのタワーへと上昇する一方、歩行者用通路のネットワークが水平方向に伸びており、都市の全体的な調和がとれている。あらゆる方向から見ても象徴的でありながら、環境に調和のとれたランドマークとなる首尾一貫したデザインが完成した。

本設計は同社の急成長を象徴するように、空に向かって回転勾配を描きながら上昇する構造体の曲率で表現されている。そのフォルムは渦を巻くような動きから生まれ、その建築フォルムが創造性とテクノロジーを融合させ、魅力的な空間を演出している。ダイナミックな動きはテンセントのテクノロジーの原点であり、生命のDNAを想起させる「ボルテックス・インキュベーター」を示している。

adf-web-magazine-ole-scheeren-tencent-competition-5

Tencent Helix by Ole Scheeren © Buro OS_05_Vortex_Incubator

adf-web-magazine-ole-scheeren-tencent-competition-6

Tencent Helix by Ole Scheeren © Buro OS_06_West_Entrance.

社会的なつながり

ボルテックス・インキュベーターは本社の心臓部であり、さまざまな高さと柔軟なフロアプランの4つのオフィスタワーをソーシャルエコシステムでつなぐダイナミックなスペースとなっている。アカデミー、レクリエーションスペース、健康施設、会議センター、コラボレーションオフィスがあるこのスペースは双方向的な利用を想定して設計され3次元的に相互接続された大規模なフロアで、さまざまな部門のスタッフが出会い、コラボレーションし、コミュニケーションするためのインターフェイスとして機能する。

ボルテックス・インキュベーターから、螺旋状に伸びたスペースがグランドロビーを形成している。レストラン、小売店、公共施設、文化的スペースなどが混在するこのスペースはキャンパスとその周辺を一体化させ、社屋は周辺地域にしっかりと根を下ろしている。従業員2万3,000人を収容することを想定し、柔軟な使用と将来性を考慮しカスタマイズ可能なフロアプレートでバラエティ豊かな空間を提供。ボルテックス・インキュベーターとその4つのタワーを囲むように、5つの独立したウィングが景観から浮かび上がり、コミュニティの多様化と発展に対応すべく柔軟な追加スペースを兼ね揃えている。

adf-web-magazine-ole-scheeren-tencent-competition-7

Tencent Helix by Ole Scheeren © Buro OS_09_Lobby_View

adf-web-magazine-ole-scheeren-tencent-competition-8

Tencent Helix by Ole Scheeren © Buro OS_10_Waterfront_View

自然とのつながり

モジュール式のプリズム・パネルで作られたファサードは、視覚的な複雑さを生み出すと同時に、内部スペースへの十分な日差しと、市街地や湾岸エリアの眺望をもたらしている。複雑な外観にもかかわらず、巧みな設計原理が構造的な効率と組織的なシンプルさを実現している。
タワーとタワーの間には、螺旋状の眺望テラスが配置され、ボルテックス・ガーデンを形成している。建物の中心にあるこの緑のエリアは、スタッフのための緑のレクリエーション・スペースを提供し、建物の持続可能性と福利厚生の中核をなす重要なオアシスとなっている。パッシブデザインの原則を優先し、ビルの4つのタワーは、すべてのオフィスフロアで最大限の自然採光を確保し、自然換気を可能にするよう配置されている。深センの暑く日差しの強い気候に最適化された設計で、ボルテックス・ガーデンに日陰と同時に海風をとりいれる役割も果たし、冷却効果が期待される。その庭園の生態系は熱をさらに発散させ、スポンジ・シティのコンセプトである貯水をも可能にしている。

未来の本社として構想されたこの多次元的な社会的・ビジネス的交流空間は、イノベーションと成長を促進し、テンセントの世界的なプレゼンスを象徴的な新しい建築で定義するものであろう。

オーレ・シェーレン設計事務所

建築、都市デザイン、インテリアデザイン、リサーチを手がける国際的な建築事務所。香港、北京、ロンドン、ベルリン、バンコクに事務所を構え、世界各地で先駆的な建築プロジェクトや都市開発を設計・実現している。シンガポールのインターレースがCTBUH 10 Years Award、シンガポールのDUOがCTBUH Urban Habitat Award 2021、2018年のDUOとマハナコンがCTBUH Award of Excellence、シンガポールのインターレースがWorld Building of the Year Award 2015、北京のCCTV本部がCTBUH Best Tall Building Worldwide Award 2013など、数々の賞を受賞している。