国立高雄芸術センター
台湾南部に位置する高雄は、台湾第2の都市ともいわれる港街。数々の著名な建築があることでも有名だ。かつては主要国際港として栄えた高雄だが、今は高層マンションが立ち並ぶ、モダンで文化的な街に発展している。人口が300万人を超える同市の文化の拠点を担うのは、およそ10万㎡の軍事基地跡地だった。
オランダの建築事務所Mecanooが手掛けた「国立高雄芸術センター」は、コンサートホール4つを収容する、巨大なアート・カルチャースペース。同地に生息するバニヤン樹に想を得てデザインされ、その低く水平に広がる屋根が特徴的。多湿気候の雨風をしのぐ屋根の下には、バニヤン・プラザと呼ばれる公共スペースが登場する。オープンな構造は、風通しを考慮した亜熱帯気候に適したデザインだ。
波形の屋根を支えるのは、4つのパフォーマンス・ホール。地上5メートルの高さの屋根とホールの間のオープンな空間は、近隣住人が散歩したり太極拳を練習したり、ストリートパフォーマンスをしたり、様々な用途で活用することができる。屋上には、公園を舞台に見下ろすアンフィシアターが造られ、公園と建物とが一体化している。外と中をシームレスなデザインで繋ぎ、そこにフォーマルなパフォーマンスの場とカジュアルなパフォーマンスの場が共存するというユニークな施設となっている。
建物内部のカーブした壁は、バニヤン樹の枝のように、大きく広がり、有機的なスペースを創り出している。建物内の空間と外の空間がシームレスに繋がることによって、巨大なスケールの建物にも関わらず、周囲に開けた、人を呼び込む構造が実現されている。
建物を支える5つの柱には、コンサートホール(1981席)と、オペラハウス(2236席)が造られている。各柱は、屋根のロビーや地下の楽屋スペースで繋がっている。
コンサートホールは、中央ステージを囲んで段違いで席が配備され、全ての角度から舞台の臨場感を楽しめる構造。
オペラハウスは、1から3階の座席が蹄鉄状に配置され、70名のオーケストラが収容できる、オペラに適した設計。台湾の花をモチーフにした柄の赤と紫の生地をまとった座席と、ダークな色調の壁とのコントラストが活きたデザイン。
リサイタルホール(434席)は、最もこぢんまりしたホールで、小規模なパフォーマンスに向いている。コンサートホールと同じ、ゴールドの生地を座席に採用し、壁面にはオーク材を使用。左右非対称に並んだ座席が特徴的だ。ホール上部には防音カーテンを装備し、演目によって残響時間を調整できる設計。
プレーハウス(1210席)は、多様な演劇やダンスパフォーマンスが上演できるよう、プロセニアム型ステージからオープンステージへ変更できるなど、柔軟性を重視した造り。
建物概要
所在地 | 台湾、高雄市 |
用途 | シアターコンプレックス、公園 |
敷地面積 | 100万㎡(建物:30万㎡、公園:70万㎡) |
設計 | 2007~2011年 |
完成 | 2018年10月 |
建築デザイン | Mecanoo |