建築と身体性1

あなたはオスカー・ニーマイヤーの建築を見て何を思うだろうか。
美しい曲線美、ブラジルならではの大胆な造形、芸術的、、、印象は様々である。
しかし、果たして「そこで滑りたい」と考えるだろうか。

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All images: "Pedro Barros Skates The Untouched Architecture Of Oscar Niemeyer | CONCRETE DREAMS" on Youtube.com.

先日、Red Bullがリリースした"CONCRETE DREAMS - Skating the creations of Oscar Niemeyer"という動画を見て、驚いた。ブラジル人プロスケーターのPedro BarrosとMurilo Peresがニーマイヤーの13もの名建築でスケートをするという内容だ。数日前にこの映像を見た時から、しばらく「建築と身体性」について考えている。以後、数回に分けていくつかの事例を紹介しながらこのテーマについて書いてみようと思う。

さて、まずはそのきっかけとなったこの映像について。

Pedro Barros had a dream to skate the iconic works of Oscar Niemeyer - one of the pillars of modern world architecture.

この一節から分かるように、そこには無謀とも思える憧れのような想いが隠されている。

We used to look at Neimeyer’s works and dream of what would be possible, if we could skate there. Obviously, we could never even think about skateboarding there because we knew that security guards would always stop us.

まず大前提として、ブラジル人なら誰もが知っているニーマイヤー建築はスケーターであれば一度は滑ってみたいと思わせるような曲線や曲面が美しい鉄筋コンクリート造の建物であること、さらにはその名建築のいくつかは世界遺産のため、スケーティングを実現するのは夢のような話だという事実がある。Pedroの家族はブラジリア出身で小さい頃からいつも彼はニーマイヤーの建築を見て育った。そのため彼は昔から一度は滑ってみたいと思っていたと言うが、まさかそれが叶うとは夢にも思っていなかった。

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そもそもスーケートムービー自体がクリエイティブであるが、ニーマイヤーの建築と向き合う事でピュアな芸術へと昇華している。世界遺産というハードルに立ち向かう挑戦的なムービープロジェクトとしての側面と、建築とスケートにまつわるムーブメントを紹介しながらのドキュメンタリーとしての構成に、建築家への愛と敬意が存分に込められていた(映画館で見たいくらいである)。

ニーマイヤーが100歳の誕生日を迎えたというカノアスの住宅(自邸)での彼らのやり取りはこうだ。

This roof is from the 1950’s; in the 50’s skateboarding didn’t even exist. He created this somehow... he already understood how to create flow. The rock, the pool, the bowl.

In brazil we’ve never the same amount of skateparks as in California, for example. We had to make do with a rock in our backyard. - Look at how the rock integrates with the house. It sits right in the middle of the whole house. - Niemeyer kept all the original rock formations and rivers on the terrain intact.

このように、カノアスの住宅における全てカーブで作られた平面と、オリジナルの岩や川の位置を元々の敷地にあった場所と同じ位置に再配置した設計が、いかにヴァナキュラーな姿勢で作られているか、それを彼らスケーターが育った暮らしの背景とともに描かれているのがとても愛らしく、この映像が著名建築家のドキュメンタリーではなくあくまでもスケートムービーであるところの所以である。建築映画ではないからこそ、ブラジルの人々にとってニーマイヤーの建築がいかに身近な存在であるか、深い愛と敬意がそこに見えた。

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では私が具体的に何に驚いたかというと、この映像に「建築の身体性」を感じたからである。

ニテロイのContemporary Art Museum(MAC)やベロ・オリゾンテのJK Auditriumでは波を愛でるサーファーのようにスロープの曲面やシェル構造の屋根を手で撫でながら滑るスケーターの姿が映る。サンパウロのイビラピエラ公園やベロ・オリゾンテのTiradentes Palaceでは谷底の洞窟のような無柱の大平面を無邪気な子供のように縦横無尽に滑りまわる。リオ・デ・ジャネイロのカノアスの住宅では曲面形状のコンクリートの屋根から地形そのものが飛び出したような岩盤へと素材を軽く飛びこえながら滑らかにスケートボードで移動する。

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これら彼らにとっては当たり前であるスケートボードのmovementによって、いつも見ていたニーマイヤーの建築が、別の空間性を帯びるというか、より身近で、より自然の一部に見えてきた。それは、よく語られる「身体性から生まれた建築」を見たのではなく、「建築の身体性」そのものを感じた。その意味で、とても美しく衝撃的な映像であった。

彼らにとっては構造物がコンクリートであろうが岩であろうがスチールであろうが同じなのであろう。まるで、都市を構成している要素を全て同じ自然物として捉えているような感覚か。建築家が設計した様々な意図を分解(無視)して、単なる移動のための地面という均質な物質に再構築しているかのようだ。様々な素材や空間要素を等価に扱うような建築の新しい「捉え方」がそこにあるのではないかと可能性を感じた。そのような感覚で、今一度この映像を見てもらうと、単なるスケートムービーとは違う面白みを感じられるのではないかと思う(次回に続く)。

※以下に本編で舞台となっている建築物をリストしておく。 

#1 Niterói Contemporary Art Museum(MAC), 1994

#2 Popular Theatre, 2007

#3 Roberto Silveira Memorial, 2003

#4 Oscar Niemeyer Foundation, 2010

#5 Casa das Canoas, 1952

#6 Brasilia Cathedral, 1958

#7 National Congress Palace, 1958

#8 Ibirapuera Marquee, 1951

#9 Biennale Pavilion, 1951

#10 OCA, 1951

#11 Tiradentes Palace, 2010

#12 JK Auditorium, 2010

#13 Minas and Gerais Buildings, 2010


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