建築家・陶芸家 奈良祐希がデザインした家元の新社屋プロジェクト「Node」

コロナ禍の始まる以前の2019年に立ちあがった、建設設計や空間デザインを手掛ける家元の新社屋プロジェクト「Node」。当初は都市中心部に権威的で象徴的な「新社屋」設計を基本構想としてスタートしたが、コロナ禍を経て、自然豊かな郊外に立地する周辺環境を引き込んだ低層の「新社屋」として緩やかにコンセプトがシフトチェンジしてきた。設計は、建築家と陶芸家として世界的に活躍する奈良祐希が担当。植栽デザインはプラントハンター 西畠清順(そら植物園)に依頼し、コロナ禍を経た次世代型シェアオフィスの新しい提案として完成した。

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「Node」について

コンセプト

太古の昔から伝わる土着的な芸術である『陶芸』

人類の進化とともに歩んできた『建築』

親和性がありながらも今まで交わることがなかった2 つの芸術と工学を等価に考えてみたいと思います。

 

  1. 地域性:陶芸は人類の最も古いテクノロジー及び芸術形式のひとつである。陶芸に用いられる素材の性質には地域により大きなバリエーションがあり、このため各地域に独自のやきものが生まれてきた。
  2. 歴史性:陶芸の研究は過去の文化への洞察の契機となる。「やきもの」は丈夫であり、遺物の研究はそれを産み出しもしくは入手した社会構成、経済状況、文化的発達などに関する理論の発展に寄与する。
  3. 社会性:陶芸の研究、例えば縄文土器の装飾研究等から、ある文化における日常生活、宗教、社会的関係、隣人に対する姿勢、自分達自身の世界に対する姿勢、さらには宇宙の理解様式までをも推測することができる。

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これらの状況は建築を取り巻く様々な事象とまったく同じといえる。こで、陶芸の「作陶」プロセスと建築の「設計」プロセスを同期(Sync) させてみる。例えば良土を求めて彷徨うフェーズを建築敷地周辺の断片や痕跡、記憶のリサーチに見立てたり、作陶プロセスにおいて重要な「釉薬」フェーズには設計へのスパイス(ある化学反応や劇薬)を探求する行為として捉えてみる。その同期や見立てによって、偶然性( 陶芸)⇆作為性( 建築)、意識( 建築)⇆無意識( 無意識)、双方の要素を逆流させ、本質的な融合を目指す。従来の概念を超えた新しい建築のイメージを創出させる試みである。

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1階は全て「シェア」概念を内包した空間です。出張型の「シェアカフェ」、学生が主体の「シェアギャラリー」、業界の垣根を越えた交流の場である「シェアオフィス」。地域に開かれた「緑道」や「路地」を介して、社会と繋がるコミュニティスペースとして機能します。2階は企業オフィススペース。北棟は「パブリックオフィス」としてセミナーやレクチャー等に対応可能、南棟は「プライベートオフィス」として執務空間を最大限確保します。2つの性格の異なるオフィス空間を「パッサージュ(渡り廊下)」が緩やかに繋げていきます。周辺環境のコンテクストで最大の特徴である「キャンチレバー(片持ち)」を実現するために、オーノJAPAN(東京都)に構造設計を依頼。木造トラス架構を各所に配置することで、約5mのキャンチレバーを実現します。緑道デザインは敷地近くに存在する「西田家庭園 玉泉園」(石川県指定名勝)を参照している。

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奈良祐希 プロフィール

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奈良祐希

1989年石川県金沢市生まれの建築家・陶芸家。2013年東京藝術大学美術学部建築科卒業、2016年多治見市陶磁器意匠研究所修了。2017年東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻首席卒業、北川原温建築都市研究所勤務を経て、2021年よりEARTHEN主宰。 陶芸分野では、Art Basel / Design Miami(スイス)、TEFAF(オランダ)、SOFA(アメリカ)などに招待出品。主な受賞歴に金沢世界工芸トリエンナーレ審査員特別賞(2017)、Pen クリエイターアワード(2021)。作品は金沢21世紀美術館(石川)などに収蔵されている。

「Node」概要

所在地石川県金沢市問屋町1-27-1
竣工2023 年3 月24日(予定)
用途事務所、一部店舗( 飲食店)
敷地面積456.59㎡
建築面積317.54㎡
延床面積473.52㎡
構造・規模木造2階建て