アーロン・ニューベルト・アーキテクツによる、地域の経済と景観に貢献する新しいブティックホテル
ロサンゼルスのウェストレイク地区は、ジェントリフィケーション(地域の高級化)により、そのかつてのスラム街としての風景を変化させてきている。再興が進むこの地域で稼働してきた「メトリック・ホテル」を家族から引き継ぐことになったオーナーは、街の再興を先取りする形で、古びたモーテルを建替えることを決意した。5年に及ぶ再建プロジェクトは、アーロン・ニューベルト・アーキテクツ(ANX)に託され、新たなブティックホテルが誕生したのである。
地域と共に再興の道を歩むべく、ANXはホテルの道に面したインターフェースや建築工程についての地域集会を開き、コミュニティを巻き込みながらプロジェクトを進めた。建設は、既存の道路や近隣環境との関係を考慮しながら、現場での建築と、モジュラー部品の建築とを組み合わせて行われた。新たに誕生したメトリックホテルは、LAのダウンタンに急増しているフランチャイズホテルとは一味違う、若者や低予算旅行者に最適な宿泊の選択肢を提供している。
ウエストサイド・アーバン・フォーラム・アワードは、メトリックホテルの誕生を、「地域に貢献してきた施設に付加価値を付けて生まれ変わらせたことで、地域の課題を克服し、街の環境改善にも一役買っている」として高く評価している。さらに、ホテルスタッフの地域採用や、メンテナンスや備品購入などのコミュニティ内調達など、徹底した地域活性化への取組みが、地域経済の発展に繋がっていることにも言及している。
2021年に完成したホテルは、以前とは異なり、道から一歩内側に入った場所に建てられ、街の喧騒から離れた落ち着いた空間となっている。道とホテルの間には、耐乾性植物をあしらった庭があり、雨水をプランターに再利用する装置も完備している。1階にはロビー、そしてレンタル自転車置き場とメンテナンススペースがある。
正面ファサードは、うねりのある金属製のパネルで覆われ、床から天井までの大きな窓からは、遠くの山々やダウンタウンの街並みを望むことができる。建物の側面は、白で統一され、1日の光の流れを映し出す客室窓の黒枠がアクセントとなっている。建物の裏側には、1階から屋上まで続く屋外階段が設置されている。1階ロビーの裏は駐車場になっており、機械設備や雨水プランターも裏側に置いてある。2階にはメインロビーとラウンジ、ダイニング、サービスルーム、そして6つの客室が配置されている。3と4階には8つの客室、5階には6つの客室と2つの寝室を完備したオーナーズスイートがある。オーナーズスイートからは、地域一帯を見下ろす眺望が楽しめる。
アーロン・ニューベルト・アーキテクツについて
アーロン・ニューベルト・アーキテクツは、2006年、ロサンゼルスに設立された建築デザイン事務所。ランドスケープ、光、そしてマテリアルを詩的に編成することで体験を増幅させるような美しい空間を創り出し、我々に課せられた環境への責務を果たせるよう取組んでいる。住居やホテル、レストラン、商業施設、公共施設など、あらゆる分野でサステナブルでサイトスペシフィックなプロジェクトを手掛け、複雑でデリケートな環境問題に向き合うことで、コミュニティのウェルネス向上に貢献している。