シックな外観とポップな内観が対象的な山間の別荘「MEV」

80年代のイタリアデザインとアートに傾倒した2人のクライアントが、プロジェクトの物語を伝える「スタジオJean Verville」の建築写真の描写に魅せられ、スタジオの力を借りて、ローレンシャン高原の山間に一風変わった隠れ家「MEV」を建設した。

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Photo credit: Maxime Brouillet photographe

この究極のプライベート空間は、建築学的な計算を厳格に行い精巧に設計されている。「MEV」では、ポストモダンの代表として一世を風靡したイタリアのデザイン集団「メンフィス」にインスパイアされた、幾何学的なデザインや鮮やかな色使いが至る所に用いられている。しかし、クライアントの多様性を表すポップな雰囲気は、シックで落ち着いた外観からは想像もつかない。内装とは対照的に、外観は周囲の景観に溶け込む黒一色に、精巧に計算された曲線を設けた有機的な形状である。建物の中に入ると一転して、グラフィックやカラフルな色使いを多用した贅沢な空間が広がり、住人の個性を主張する。

建物の南側からは、立地の主目的であった、そばを流れる小川とその後ろに広がる景色を望むことができる。北側には、2棟がガラス張りのエントランスで繋がっており、ひとつ屋根の目隠しのようになっている。ブール演算を用いた関数型理論により、屋根の平面は庇を軸にして転位させ、ボリュームに変化をもたらし、複雑なシルエットへと再定義されている。

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Photo credit: Maxime Brouillet photographe

計算されつくした空間には、住居と収納のスペースが設けられている。建物の中は、テクスチャー、色、そしてマテリアル全てが光を反射し、まるで万華鏡のような空間である。シンプルな外観から一歩足を踏み入れたときの視覚へのインパクトは、住人の遊び心の現れでもある。普通とは一線を画したボリュームや表面への介入もしかり、子ども心をくすぐるような派手なパターンや色の装飾もしかり、である。自然への入口であるローレンシャンの森は、未踏の地に建った、この活気ある自由な生活と営みのための住居を、おのずと迎え入れている。

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Photo credit: Maxime Brouillet photographe

Jean Verville Architectesについて

Jean Verville Architectesは、建築家 Jean Vervilleをリード・アーキテクトに据え、建築家Tania paula Garza Ricoがディレクションする建築デザインオフィス。学際的なチームにより、多様なプロジェクトを手掛けている。現在は、3,000㎡の歯科医療施設、大麻の研究開発センター、個人宅やアパート、別荘、アートフェス向けの没入型インスタレーションなど、国内外のプロジェクトを多数進行中。