一時的な構造体としての可能性

建築デザイン事務所ODPによるWoodStackプロジェクトは、建物の恒久性という概念に挑戦し、素材の価値に対する私たちの認識を問い直すものである。このプロジェクトは、木材の積み重ね、材料の保管場所、そして建造物との境界を曖昧にし、新たな視点を提案している。建築物の寿命が尽きたとき、その素材が適切なリサイクルのサイクルに戻るのが理想的であるが、現実には建築材料の多くは複雑な状態にあり、再利用が難しい場合が多い。

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Photo credit: Office of Dillon Pranger (ODP)

WoodStackでは標準的な寸法の木材を使用し、外観は材木置き場でよく見られる巨大な木材の山に似せている。材木置き場が一時的な保管場所であるように、WoodStackも一時的な存在として設計されており、簡単に分解・再利用できる構造となっている。この設計により、建築物の寿命が尽きた後も素材が別の用途で再利用される可能性を高めている。

プロジェクトは2つの平行に積み重ねられた木材の山で構成されており、その間に内装スペースが設けられている。WoodStackはコンクリートの基礎によって地面から持ち上げられ、湿気から素材を守るよう設計されており、また耐候性のクラッドが施されているため、長期間の使用に耐える作りとなっている。

さらに、建物の上部は未完成のまま残されており、素材が他のプロジェクトに利用されるたびに取り外されることを示している。これによりWoodStackは常に変化し続ける一時的な構造体としての役割を果たし、持続可能な建築の未来に向けた新しいモデルとなっている。

ODP

Office of Dillon Pranger(ODP)は、イリノイ州シカゴに拠点を置く建築デザイン事務所で、地域の文脈や素材に応じたプロジェクトを手掛けている。設立者であるディロン・プランガーは、建築家でありデザイナー、そしてファブリケーターとして、持続可能な建築材料と建設技術に注力している。さらに、循環型経済をテーマとした「The Architecture Waste: Design for a Circular Economy」の共同編集者であり、建築の役割を見直し、素材の循環を促進する設計手法を提唱している。